第11話 理性の檻と情熱の解放

 図書館の閉館を知らせるアナウンスが響く中、吾郎は五月と共に書庫へと足を踏み入れた。埃っぽい紙の匂いが満ちるその空間は、二人だけの秘密の舞台となった。吾郎は五月の手を握り、彼女を静かに見つめた。五月は、いつもと変わらない冷静な表情を保っていたが、その瞳の奥には、抑えきれない情熱の炎が揺らめいていた。


「吾郎、あなたは本当に、ずるい男ね」


 五月はそう呟くと、吾郎の顔に両手を添え、ゆっくりと唇を重ねた。それは、結月の切ないキスとも、皐月の情熱的なキスとも違う、理性的でありながら、吾郎の存在を全て飲み込もうとするような、深く、静かなキスだった。


「吾郎…」


 五月の声が、吾郎の耳元で聞こえる。その声は、いつもよりも甘く、そして僅かに震えていた。吾郎は、五月の服に手をかけ、ボタンを一つずつ外していく。五月は、吾郎の手つきに驚くことなく、ただ静かに見つめていた。その瞳には、これから起こる出来事を、論理的に分析しようとしているかのような光が宿っていた。


 服がはだけ、露わになった五月の白い肌。吾郎は、その肌に唇を寄せ、ゆっくりと愛撫を始めた。五月の身体は、吾郎のキスに小さく震えた。


「吾郎…あなたは、私の身体を…どうするつもり?」


 五月は、問いかけるようにそう言った。吾郎は、五月の言葉に何も答えず、ただひたすらに彼女の身体を愛撫した。吾郎の愛撫に、五月の瞳は揺れ動き、その冷静な表情は、少しずつ情熱に侵されていった。


「吾郎…もっと、あなたの手で…私を…」


 五月は、吾郎の耳元で囁いた。その言葉に、吾郎は五月の身体を愛撫し、彼女の快感を高めていく。吾郎の指が、五月の肌をなぞるたび、五月は小さく喘ぎ、身をよじった。


「んっ…ひぅっ…吾郎…そこ…だめ…」


 五月は、吾郎の愛撫に抗うように、弱々しい声でそう言った。しかし、その声は、吾郎の理性を完全に吹き飛ばす、甘く、誘うような声だった。吾郎は、五月の言葉を無視し、さらに深く、彼女の身体を愛撫した。


 吾郎の舌が五月の唇をなぞり、ゆっくりと彼女の口内へと侵入する。五月は、驚くことなくその侵入を受け入れ、応えるように舌を絡めてきた。互いの唾液が混じり合い、甘く、生々しい味が口の中に広がる。吾郎は、五月のキスに、知性とは異なる、本能的な熱を感じた。


「吾郎…もっと…深く…」


 五月は、吾郎の胸に顔を埋め、そう囁いた。その言葉は、吾郎の心を強く締め付けた。吾郎は、五月の言葉に応えるように、彼女の身体を愛撫し、彼女の快感を高めていく。


 二人の身体は、互いの熱を分かち合うように、一つになった。五月の身体は、吾郎の熱い身体に触れるたび、初めての経験に戸惑い、小さく震えた。しかし、その震えは、快感と歓喜の震えへと変わっていく。


 吾郎は、五月の身体を抱きしめ、自分の身体を深く埋めた。五月は、吾郎の行為に喘ぎながら、吾郎の背中に爪を立てた。


「吾郎…だめ…もう…だめ…」


 五月は、そう言いながら、吾郎の身体を強く抱きしめた。その抱擁は、吾郎の心を安らぎで満たしてくれる。


 吾郎は、五月を強く抱きしめながら、彼女の身体に自分の身体を深く埋めた。五月の身体は、吾郎の身体を優しく受け入れてくれた。二人の間で交わされる快楽は、吾郎の孤独を、一瞬だけ忘れさせてくれた。


 書庫の静けさの中に響く、二人の吐息と、甘い喘ぎ声。それは、家族という壁を突き破り、新たな禁忌の愛へと踏み出した、二人の最初の夜だった。


 しばらくして、二人は静かに身体を離した。熱を帯びた肌が、ゆっくりと冷えていく。部屋の中には、二人だけの吐息と、かすかな汗の匂いが満ちていた。吾郎は、五月の隣に横たわり、天井を見つめていた。胸には、言いようのない罪悪感と、同時に、深い安堵感が広がっていた。


 五月は、吾郎の胸に頭を乗せ、静かに身を寄せてきた。彼女の髪からは、本の匂いがした。吾郎は、五月の髪をそっと撫でた。


「吾郎…」


 五月の声が、吾郎の耳元で聞こえる。その声は、もはや理性や論理の色を帯びていなかった。ただひたすらに、吾郎を求めている、切なく、そして甘い声だった。


 吾郎は、五月を抱きしめたまま、静かに目を閉じた。それは、新たな罪悪感と、新たな快楽の始まりだった。

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