第5話:勃発! ヨーロッパ戦線(後)
1936年6月26日、フランスは事実上、たった十数時間で崩壊した。いろいろな要因は存在したが、まさか1日持たないとは思っていなかったのか、ドイツ首脳部ですら困惑するほど、理想的に戦局は進行した。
だが、第二次世界大戦はここからが本番である。何せまだフランスが崩壊しただけなのだから。ゲームで言えば、ドイツ第三帝国はせいぜい第一ステージを突破しただけなのだ、第二ステージ以降はまだ雲霞の如く存在した。
とはいえ、植民地の都合上数だけは世界有数のフランス艦隊やイタリア艦隊、更にはバルカン半島の枢軸国などが参戦したドイツ第三帝国の戦力や工業生産量は大きく膨れ上がった。そして、ヒトラーが次の目標を定める中、香港方面でも一騒動起き始めていた……。
「一応、おれらは出頭命令が出ていないとはいえ、いつでも帰還出来るよう準備は固めておけ、って隊長の私信に書いてある。この戦争、第一次同様に長いかもしれん」
「えーと、帰還命令が出てないのに準備すべきなのはなんでなんだぜ?」
「ほら、震旦政府は日本と戦争中じゃん? ……同盟国同士の相撃は拙いんじゃね?」
「……ああ、そういうことかいな」
「……って、それ彼女達に聞かれても大丈夫な話題?」
「ああ、問題ない。彼女達の身元を確認したが、
「まあそもそも、うちらは元々漢民族じゃなくて流亡の民だし。一宿一飯の恩義、ってワケ」
「……まあ、そういうことでしたら」
「で、うちらに何を広めて欲しい?」
「……できるならば、ドイツ第三帝国の名前の下、日本には震旦と停戦してソビエトへ向かって欲しいんですけどね……」
「……えっ、ソ連ってドイツと同盟結んでなかった?」
「……ええ、まあ、そういうことです」
「……あー、そういうことね。……判ったわ、漏らさないし、それとなく親日ムードは煽っておくわよ」
「有難う御座います。……で、なんですが……」
「なにかしら?」
「実は、もう一つ……直接的に頼まれてくれませんか」
「……うちらに、出来ることなら」
「ああ、それならば、間違いありません。むしろ、貴女方以外には、難しいかと」
「……これ?」
と、首を指さす彼女。流石に、察しが良い。
「……ええ。身体の管理は厳重にしておきますので、何卒特技を生かして頂きたいと思いまして」
「判ったわ、任せて」
今日は小唄を唄い、冷やしたワインを飲もう。
そして乾杯をしよう、別れの日が来たのだから。
~大戦歌曲、「イギリスの唄」より冒頭を抜粋~
たった数時間でフランス共和国首都、パリを陥落させたドイツ軍は余勢を駆ってイギリスへの攻撃を開始した。いわゆる、「バスター・オブ・ブリテン」である。その中には、なんとあの……。
「は?」
「ですから!」
……あるスツーカ・パイロットが急降下爆撃によってイギリス首相官邸をチャーチルごと爆殺したという一報がヒトラーの私室まで届くのは、そう長い時間が掛からないものであった。
とはいえ、イギリス国民の反応は冷たかった。何せ、チャーチルはガリポリの肉屋から名誉回復の機会を与えられずに爆殺されたのである。そして、首相に復帰したのは、無論「大英帝国の賢者」、チェンバレンであった。
そもそも、チャーチルがなぜ首相の任を負ったかと言えば、チェンバレンが病気と戦争回避失敗の責を負って退任したからなのだが、それがこのざまであった。まあ、ガリポリの肉屋にしては最期の舞台に立てたのだから運の良い方であったのだろう。
……そして、その「ガリポリの肉屋」を爆殺した人物とは……。
「……少尉、どうやら我々はイギリスの首相を爆殺したようですな」
「……そうか。やってみるもんだな」
《ハンス、こっちはバッキンガム宮殿を爆破したがお前は何を打倒し得た?》
「こ、これはステーン大尉! ……どうやら、私は敵の首相を官邸諸共爆殺したようです」
《そうか。初陣にしては大手柄じゃないか。鉄十字章は確定だな》
「はは……、ここから生きて帰れたら、ですがな!」
《……その通り。わかっているじゃないか。それでは、生きてベルリンで逢おう!》
「ははっ!!」
……ハンスという、当時少尉に過ぎない男であった。……だいたい上官の「ステーン大尉」の名で察しの付いた方も多いとは思われるが、ネタバレはご勘弁願いたい。
「あれっ、お姉。うちらの出番は?」
「……しっ、今潜入捜査中よ、忘れたの?」
「あっ、ごめーん……」
やあ、こんなに濡れてしまったよ。
私のモノがどんどん大きくなるだろう?
これが君の中に入っていくんだ。
どんどん気持ちよくなっていくからな。
~この世界には存在しないであろう「Hey Jude」なる歌より和訳を抜粋
1936年6月30日、フランスよりは持久力を見せたものの、大英帝国ことイギリスはたった数日で破綻した。いかに莫大な植民地を保持していたとしても皇帝の座する首都がやられてしまってはどうしようもなかった。そして、イギリス皇帝ジョージ6世は廃位、娘であるエリザベス2世を事実上の人質としてヒトラーが娶ることとなり、ここにクロムウェルに続く共和制イギリスが誕生した!
「フューラー、やりました!」
「ロンドンの陥落は聞いている、他に何が起こった」
「日独防共協定の密約を取り付けました! これでエース揃いだった震旦軍事顧問団を退却させることが出来ます!」
「おお、そうか! よくやった、これで後は……」
「ロシア遠征だけ、ですな」
「おいおい、儂より先に言うでない。……まあ、そういうわけで、だ。演説の用意をする、準備は出来ているだろうな?」
「ははっ」
だが、日独防共協定の密約はあくまで密約として留めおかれることとなる。なぜならば……。
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