フィラメント/カクヨム短歌賞1首部門応募作品

森野きさ

フィラメント

一番手 君か自分か 密かなる競争に勝った朝の教室


授業中 君が落とした消しゴムを拾う指爪しそうに 鼓動集いて


これが恋 夏の日差しと二次性徴 吾の髪に触れようとした指


眺めれば眺めるほどに好ましき目元手の指素肌唇


玉の緒よ 絶えなば絶えね 秘め恋の香を辿るよな眼差しを受け


身を焦がし忍ぶることを止めたなら 自分が自分で無くなる気がした


君の友 ふざけて私に壁ドンを 瞬間君は、おいと叫んだ


雨振りて下駄箱前で空仰ぐ君は私見て 雨中へ駆けた


隣席でそれぞれに友と語らう中 肩背中ときに触れ合う偶然


黄昏の図書室の影鉢合わせ 去ろうとする手首掴まれて今


湯舟にて手首に触れて 幻惑の視線をくれた唇に焦がれる


斜陽差す校舎の隅で何を言うでもなくうなじに感じた視線


潮騒に心委ねて飛び越えてゆくことは理性が止めていたので


手に入れた途端に終わった身を焦がす恋は心のフィラメントでした

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フィラメント/カクヨム短歌賞1首部門応募作品 森野きさ @kisamorino

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