星々の話
ゆめのみち
第1話 彼ら
彼らはどこから来たのだろう。
働いたら彼らが増える。
大昔から存在している。
本当の事を答えられる人は少ない。
昔、1人の赤ん坊がいた。お腹がすいて泣いたら、親がすぐにミルクをくれた。おむつが不快で泣いていたら、これまた親がすぐに変えてくれた。
物言わぬ、姿もない親は、静かに世話をしてくれる。赤ん坊は笑顔も声も知らないまま育った。
それだからか喋ることも感情も知らなかった。
よちよち歩きができる頃、周りに鏡もなく、窓もない部屋で、子供は周りの星を見ていた。
遠くにあるはずなのに大きい存在。星は見えるのに周りは真っ暗。それに疑問を思うこともなく、ただ眺めていた。
ある時、近くの星が、遊ばないの?と言った。
初めての声に驚いて子供は泣き出す。慌てて周りの星たちはあれやこれやと子守唄を歌ったりしてあやすが、泣きつかれて寝るまで泣き続けていた。
起きたら子供らしくすっかりすべてを忘れていた。子供は初めての声、いや、音をどうやって出せるのか、自身の体を触り始める。体を擦る音、叩く音、つねる痛み、くすぐったさ、すべてが新鮮で数日間遊び続けた。けれど声の出し方はわからないままだった。
ある日、初めて話しかけた星が見かねて
「お腹に力を入れて、ここを使ってごらん」
と喉に光を当てて教えた。
「う、あ、ぁ」
と力強く声が出る。それが面白くてまた数日間、声で遊び続けた。
遊びながら子供は成長していった。
それは9歳の頃だった。真っ暗なのに星だけが見える異様な場所で、親ではなく星々に色々な事を学んで、とある事を思いついた。
自分の髪の毛を1本、引きちぎり器用に結ぶ。結び続けるうちに、人のような藁人形のような形になっていった。それを自分の吐息で作った仮の星に投げると、人のようなものになった。
何度も繰り返してどんどん作っていく。髪の毛がなくなり、ようやく作るのをやめると、今度はその星を眺め始めた。
彼らは最初こそ、歩き方も分からず、餓死するものや、争うものもいた。けれど次第に互いに協力しあい、仮の星の生き物を食べて生活していった。もうそれは人と呼べるものになっていった。
子供が何もせずとも、彼らは時が経つにつれ話すようにまで成長したのだ。子供は嬉しくて、もっと生活をしやすくしようと、髪の毛が生えるたびに人を作った。そのたびに新しい人ほど学ぶ知識の量か運動の才能が古い人より進化していた。
それが気に食わないのか。徐々にいじめや争いが始まった。人々は燃えていく。人々の流れも止まって、娯楽も止まる。物の動きも止まって餓死する人が増えていく。
そして子供は考えた。
流れをスムーズにしないといけないと。
今度は間引きを始めた。
するといじめる者や争いも減り、流れも良くなり、物も隅々まで届くようになった。
けれど今度は、人々が寿命でなくなっても人が増えないので流れが少なくなった。この作られた人のようなものは所詮物なのだ。子を産むこともない。いつの間にか増えている知らない人を仲間に迎え入れて、町や国を大きくするしかなかった。
あちこち届ける人も減っているので物も届かなくなっていく。娯楽も減り、みんな最低限で生きるだけになる。
それを眺めていた子供は、人とは厄介だなと思いながら、髪の毛から人を作り始めた。
増えすぎると間引き、減ってきたら増やす。それを繰り返していくと、平坦な、平凡なものになった。
育てるのも大変だとクスクス笑い、飽きてその星を壊すまで、子供は人の数をきちんと見ていた。
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