主人公は、伝説の聖剣を手に、魔王を倒した元勇者。なのに、山奥の村で酒場を営むおじさんに。
なぜこんなことになった? 導入からこの主人公に興味を持たずにはいられない。
勇者の力を怖がられた? 魔王討伐したのに周りの扱いが雑だったのが嫌だった? 人間同士の争いが始まって嫌になった?
原因はなんでしょう?
ある日、主人公はある理由で声を失った王子様を、預かってほしいと言われ村で一緒に暮らすことに。
独身おじさんの元勇者は、子ども、しかも王族の扱いに困ってしまう。
しかし、この王子様は子どもながらに人間ができていらっしゃる。王子様と暮らているうちに元勇者に変化が表れていくのか? と続きが気になる物語です。
【第25話まで読んでのレビューです。】
かつて世界を救った一人、勇者シノンの10年後を描く物語!
勇者とはいえその性格は不器用で臆病。人間らしさが見事に描写されていて、白髪になった彼は子供にも舐められる始末。勇者シノンがスローライフのために始めた酒場のマスターとしての顔、そして私がオススメしたいリアリティのある彼の恋路のパートは何回も読み直したくなる事間違いなし!
そして彼の身体にはある秘密が隠されていて⋯?
さらにかつての仲間から、声を失った実の息子を託されることになり、心を通わせようとする交流パートも秀逸!
果たして不思議な縁で繋がる彼らの行方は⋯?
ある秘密を抱えた元・勇者が主人公の、穏やかで儚い生活が始まる―――。
まず、主人公シノンのキャラがとにかく良い!!
伝説の聖剣によって魔王を倒した勇者。
その実態は……酒好きで、ヘタレで、不器用で、そして優しいひとりの人間。
二日酔いでフラフラだったり、おだてられて調子に乗ったり、村の子どもたちにナメられたり。
そんな等身大の描写にグッと惹き込まれてしまうのです。
小さな村で酒場の店主をしている彼は、とある事情から、声を失ってしまった王子様を預かることに。
こうして、勇者としての役割を終えた『おじさん』と、心に傷を負った少年のスローライフが幕を開けました。
徐々に心を通わせていく二人。とくに村に着いてからの日常描写は、物語全体に心地よいリズムを与え、自然とほっこりした気持ちにさせてくれます。
王家での政争や魔族の存在。そして勇者の聖剣に秘められた、とある真実。
こういったダーク要素とのコントラストも大きな魅力。
作り込まれた世界観と、奥行きのあるキャラクターたち。わたしがスローライフものに求めていたものがここにありました……!