獄の基は震え動く
ぶざますぎる
獄の基は震え動く
あいつらを人間と思うな
壇上から上官が怒鳴った
戦地に赴いて
これからおまえたちが見るのは豚の群れだ 上官は続けた 人間は豚に対して何をしてもいい あの豚どもはおれたち選ばれし民とは違う 生まれた時から地獄往きが決まってるんだ やつらは穢れた豚どもだ 呪われてやがるのさ
牧者を
汝がその敵より奪ひ獲たる物は汝の神ヱホバの汝に賜ふ者なれば汝これをもて楽しむべし
どこへ行くつもりだ 兵士のひとりが
彼らは支援物資を取りに行くんだ PRESSと印字された防弾ベストを着た男が骨の浮き出た腕を振り人群の
兵士は男の眉間に銃口を突き付けた 食糧配給所へ行け
男は臆せずして落ち
言いがかりはよせ 兵士は肩を
男は満面に怒気を滲ませた お前たちがやってることは戦争犯罪だ
おれたちが行っているのは治安活動だ 兵士は鼻で
なんぢ
この苦しむもの叫びたればヱホバこれをききそのすべての
デイヴィットは
闇
何も見えない
汗みどろの
灯りをつけて鏡に向かうと裸身のてめえが見返した
どおおおんという雷轟のような砲声は
裸身のデイヴィットは洗面所の灯りを消して部屋に戻る 暗い部屋では血塗れのデイヴィットが金切り声をあげながら腕を振り回し握り込んだ拳で
硝煙と血の香りの
部屋に戻る 割れた拳に
すべての音が止む
壁に掛かった時計が
洗面所の鏡を叩き割った血塗れのデイヴィットは金切声を出しながら部屋に戻ると壁掛け時計に
ベッドの縁へ座り込み
デイヴィットは
何も見えない
破壊された壁掛け時計の
口と
白金は闇を塗り潰す
光
凄まじい
光
光
光
ナンゾワレヲハクガイスルカ
ナンゾワレヲハクガイスルカ
ナンゾワレヲハクガイスルカ
闇は烈しく
あいつらを人間と思うな 壇上から上官が怒鳴った
沈として隊伍を組んだ兵士連は
つと
あいつらは豚じゃなかった
兵士連の裡から
なんだと 上官は胴間声で怒罵する 声の主を探す
あいつらは豚だ
あいつらは豚じゃなかった 兵士が返した
あいつらは豚だ
あいつらは豚じゃなかった
あいつらは豚だ
あいつらは豚じゃなかった 兵士が言った
裏切者が 上官は血走った
あいつらは豚じゃなかった
上官が失せても
デイヴィットは右
オ レ ハ ニ ン ゲ ン ヲ コ ロ シ タ
デイヴィットは口を開く 顎が少しく
オ レ ハ ニ ン ゲ ン ヲ コ ロ シ タ
静かな
オ レ ハ ニ ン ゲ ン ヲ コ ロ シ タ
それから
<了>
獄の基は震え動く ぶざますぎる @buzamasugiru
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