至宝

映画館

第1話



私の世界には光がない。


目を開けた時、その目を刺激するものが何一つない世界で生きてきたからだ。


だけど、私の世界ではないところには光がある。


私がそう願った時、目の前でそれはキラキラと輝いているから。



ぼんやりと目の前のキラキラな世界を見ながら考える。


この世界では部屋の中はとても明るく、ボタン一つで世界を照らせる。あれ、ボタンってなんだっけ?”私”の世界にはないものだ。



聞きなれない言葉が頭の中で浮かんでは消える。



イルミネーション、電気、車。それらは昼夜問わずキラキラ輝いていて、あの世界で見るものはまるで魔法のように私の心をワクワクさせてくれる。


だけど残念。あの世界には魔法がない。魔法があるのは、私の世界。



それなのになんでだろう。私が今いるこの部屋には、光が一切ない。



「灯せ。っっ、あがっ!」


言うだけで光が部屋中を照らしてくれるはず。それなのに待っていたのは激痛。もちろん光は灯らない。


痛みの原因は腕と足についている輪っか。その腕輪と足輪は更に鎖で繋がれていて、長い鎖は更に壁に繋がれている。私の自由を奪い、私の魔法を奪っているもの。



痛みの原因をかきむしる。自分の血が出るだけでなんの変化もない。そうしている間も私の世界に光はない。あの世界とは違ってこの部屋には光を照らすものは何一つ置いていないのだから当たり前だった。



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