第8話 旅人と病

旅人の病は他人に感染するものではない。

故郷に戻る体力さえあればいいのだ。

基本は歩かないようにして体力を残しておきながら、病に蝕まれる体を動かした。

長期滞在した街は少ないから旅人を覚えている人の方が少なかった。

旅人からすると好都合でしかなかったが。

病に蝕まれる体や今の体力のない状態を見てほしくなかった。

ジニアとの芸を見てくれた人は子どもが多かった。

子どもを悲しませるかも知れないという想像が誰にも会ってはいけないという考えをより明確なものにした。

「ジニア、お前を1人にはしないからな。」

返事など返ってくるはずもないが、無意識的にジニアに話しかけていた。

旅人の最後の考えであり、決意だったのかも知れない。

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