聲ノ淵、手触れ得ず

白蛇

聲ノ淵、手触れ得ず

夕月夜

身を投げし淵

最後まで

君が微笑み

忘れ得ずして


けぶりへと

吾が身消え行く

夕まぐれ

君に見初めし

日を偲びつつ


薄氷の

露にぬれつつ

君を待つ

よひの白影

うたたねに寄る


よるの音

君が名呼べど

応へ得ず

薄き影のみ

ねやにたゆたふ


消えぬれば

君が手向けし

衣香きぬがかを

夜の帳に

いまもしのばん


夢路より

君よばふ声

しじま過ぎ

ひとしづく

吾が想ひかな


曼珠沙華

秋の野に立ち

君を待つ

いまは彼方かなた

火となり果つる


黒しづく

君がしのびて

手に受けし

朽塔婆の名は

いまも我なり


花の影

君が歩みを

見送りて

誰そ彼時に

また逢ふを願ふ


篝火の

灯りに君を

しのびつつ

声絶えし夜に

涙こぼるる

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聲ノ淵、手触れ得ず 白蛇 @shirohebi_495

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