ようこそ、地獄のリゾートバイトへ!【カクヨムコンテスト11】

キシケイト

オープニング(2025/08/05更新)

 ——波の音が聞こえてくる。

 夜のとばりは、海の底から昇る黄金の輝きに押され、その幕を開ける。


 ひと筋の涙が頬を伝って流れ落ちる。

 それは朝日の輝きを映し出し、涙のあるじに新しい命を与えた。


 心臓のが動き出す。

 身体からだ中を血液の炎がめぐり、動き出した——。


 ——もう朝? まだ眠たいのにぃ。それに波の音、近くない?


 目を開けると、空が地面にあった。


 えっと……ね、、変なことは言っていないと思うのよ。

 もしかして、を使い過ぎて、頭がおかしくなっちゃったのかしら?


 つまり……どういうことか、説明するわね。

 ヒナ、手足を縛られていて、逆さ吊りになっているの!


 ——の高台にある、古びた木造の東屋あずまや

 今は使われていないらしくて、つたが生い茂っている。


 そこの柱にくくり付けられ、朝日の後光をびていたの。

 もー! こんな状態で、セロトニンが分泌ぶんぴつされたって、メンタルは安定しないわよ!


「よっ、ほっ。くっ! 何よこれ! ……ほどけない!」


 必死になって、あたりを見渡す。

 十字架を思わせる東屋の柱。

 生い茂った草。

 柱から吊るされているのは、片方の足だけ。

 両手は後ろで縛られていて、自力で脱出はできそうもない。


 破れた青いシャツがれる。

 に捨てて荷物を減らそうと、ヨレヨレの物を持ってきていた。

 ちなみに下は、毛玉だらけの赤いレギンスだったりする。


 ……もしかして、タロットカードの『吊られた男』になぞらえて殺されている?


 ——パンドラの箱が開いた音が、聞こえた気がした。



 そう、ここは陸の孤島。

 ヒナは大学の夏休みを利用して、とある島のペンションへ、リゾートバイトをしに来ていたの!

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