たぶん参考にならないプロットの話

 リクエストがあったので、プロットのつくりかた、視覚優位版です。

 参考になるかどうかはその人次第だけど、少なくともこれで物語を作り続けてる人はいます、ということで――。



 ある日(というかさっき)のこと。

 彼に、物語のプロットってどう作ってるのか聞いてみた。


 彼は少し考えてから、

「うん……映画の予告編、みたいなものだと思ってる」

 と言った。


 話の順番とか、テーマとかじゃないらしい。

 まず最初に、頭の中にいくつかの場面が、バラバラに浮かんでくるんだという。


 彼が産まれて最初に書いた、ちゃんとした長編の物語は、こんな風に思いついたそうだ。


 登場人物の姿が思い浮かぶ。(ゲームだから設定ラフがある)

 彼が書くべき時代は設定されている。(指定されていた)

 これが恋の――悲恋の物語なのは決定している。


 ――で、どんなシーンがあるのか想像してみたそうだ。


 たとえば――


 ・土の上で尻餅をついて、きょとんと振り返ってくるネコを思わせる少女。雪が降り始めている。場面は幕末の京都。

 ・剣を両手で抱えて祈っている白い巫女。

 ・少女が呪文を唱える声とともに、月の下に現れる巨大な蜘蛛。

 ・布団の上で苦しそうに息をする、少女。

 ・山伏姿の男と向かい合い、剣を抜く。

 ・白い髪が風に舞って、そこから甘い香りが漂ってくる。

 ・「百年…貴方を待っていたの…千年…貴方に恋していたわ」大きな月を背景に白い巫女が言葉を紡ぐ。


 彼はそれらの場面を、一枚ずつ並べるように思い出す。

 まだ順番も意味もない。

 けれど、どの絵も強くて、頭から離れない。

 だから、まずはそれでいいのだと言う。


 あとからなんとなく流れが見えてくる。


 あの少女との出会いが始まり。

 蜘蛛を呼んでいたのは、あの少女だった。

 たぶん敵になる子だろう。

 巫女が持っていた剣は神剣で、その化け物蜘蛛と戦うためのものかもしれない。


 その線は理屈ではなく、感情で引かれる。

 あの子はなぜあんなに寂しそうだったのか。

 巫女は、何を待っていたのか。

 病床の少女は、誰の記憶と重なっているのか。

「待っていた」と言われたとき、自分の中で何が震えたのか。


 そうして少しずつ、点が線になり、やがて物語になる。


「予告編が出来たら、後はシーンとシーンを繋いで物語にするだけでしょ?」


 その言葉を聞いたとき、私はすごく腑に落ちた。


 彼にとってプロットを作るというのは、語りたい何かを考えることじゃなくて、すでに心の奥にある場面を、順番を気にせず拾い上げて、あとから意味をつけていく作業なのだ。


 彼はいう。

 ただ、この場合大切なのは、まずはキャラクター。

 場面を思い浮かべるためのパーツとして、時代、舞台、キャラクターがないとどうしようもない。


 だから彼は、最初にキャラクターとその背景をつくるんだよ、と笑う。

 細かく細かく、キャラクターを書き込んで背景を設定して、言って欲しい台詞を列挙してゆく。


 キャラが語って、動き出してくれたら後は名場面を繋いでいくだけ。


 なるほど、と納得しかけた時、彼は真逆のことを言い出す。

「でも実際、ここは順逆でもよくて、絵が見えてから、その見えたキャラを深掘りしていっても、結局は同じになるんだよね」という。



 なんだそりゃ!! さっき最初にキャラクター大切いってたじゃんよ!?

 いやいや、絵が見えたら、そっから彼、彼女のことを深く考えるから同じなんだよ。 

 チェシャネコのように人が悪い笑みを浮かべて彼はいうが、多分嘘はいっていない。


 ――何という後付け!

 まったく参考にならない! これだから視覚優位は!!


 参考になるかどうかはわからない。

 でも、まずはキャラクター。あるいはあなたに見える絵。

 そして“予告編”を組んでみる。

 作れる人には、これはたしかに有効な方法だと思う。

 ――特に、絵が見えてる人には。


 そうではない私のプロットの作り方もあるけれど、まずはここまで。


 

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