高度編:脳内で何が流れているのか
また視点の話で申し訳ないが、今度は少し高度な話になる。
でも理解すれば、間違いなく武器になる。ぜひ最後まで読んでほしい。
彼に聞いたんだが、小説の視点操作を覚えるときに大事なことがあるという。
それは──自分の脳内で物語がどう再生されているかだ。
想像してみてほしい。
主人公が駅のホームに立っている。
このとき、君の頭の中に浮かぶのは──
ホームに降り注ぐ夕日、吹き抜ける風、遠くの列車の光……といった映像?
それとも「主人公は駅のホームに立っていた。夕日が眩しい」という文章?
彼は前者、私は後者だった。
「なら君は言語優位だね。俺は映像優位だよ」と彼は笑う。
■二つのタイプ
視覚優位タイプ
頭の中では映画が流れている。カメラマンも照明係も優秀で、役者も全力演技。
見たものをそのまま描ける反面、映像としては完璧でも、言葉に変換しないと読者には伝わらない部分がある──これが罠だ。
言語優位タイプ
頭の中では活字が流れている。
語り手の声や台詞が先に響き、地の文の構造もほぼ完成している──
しかし、ここからが問題だ。
風景を描こうとしても、頭にあるのは「机がある」「窓がある」というメモ程度。
色は? 光の向きは? 家具の配置は? と自分に尋ねても、返ってくるのは沈黙だ。
結果、「とりあえず会話を進めよう」となる。
映像優位の人が“見たまま描く”なら、言語優位は“見えないから書けない”。
だからこそ、いちいち現場検証みたいに「この位置だと右手に窓があるな」と確認して、文章に肉付けする作業が必要になる。
楽さでいえば、確かに映像優位のほうが一歩リードしている。
だが言語優位には、「最初から言葉で組み立てている」強みがある。
映像優位が“翻訳作業”を挟むのに対し、こちらは直に文章を叩き込める。
つまり、磨けば“精密な一撃”を放てる職人型になれるのだ。
話は変わるが、視覚優位といえば、栗本薫だろう。
あの見てきたような情景描写──光の角度、影の伸び方、風の匂いまで文章から立ち上がるあの感じは、脳内映画を言葉に焼き付ける作業の賜物だ。
さて、自分が映画館派なのか図書館派なのか分かったら、それはもう弱点ではない。
正しく磨けば、最高の武器になる。
ここからは、その武器をより切れ味鋭くするための操作術だ。
●覚えておくと便利なテクニック
■視覚優位タイプ:カメラ操作術
カメラ位置を決めたら、シーンが終わるまでむやみにワープしない。
見えることだけを描写する。見えていない情報は別のキャラに見せてもらうか、シーン切り替えで出す。
心情は必ず言葉で補足。映像だけでは役者の演技が伝わらない。
(悪い例)
ジョンは机を叩いた。
窓の外の雨が止んだ。
(良い例)
ジョンは机を叩いた。
「ふざけるな!」
怒声の余韻が部屋を満たすころ、窓の外の雨が嘘のように止んだ。
■言語優位タイプ:マイク操作術
語り手の位置を決める(どこから・誰が語っているのか)
最低1つは視覚的ディテールを足す(位置、光、色、動きなど)
頭の中の文章を箇条書きしてから、位置関係や情景を足すと立体感が出る。
(悪い例)
彼は部屋に入った。
机の前に座る。
会議を始めると言った。
(良い例)
彼は会議室の扉を押し開けた。
曇りガラス越しの光が長い机を照らしている。
「会議を始めよう」
■両方に効く:視点切り替えの合図
視点を切り替えるときは必ず“乗り換え案内”を出すこと。
電車だって、いきなり路線が変わったら誰だって混乱するだろう。
段落や章を変える
視点人物の名前や感覚を挟む
明確な時間経過や場面転換を入れる
これを入れずに視点を飛ばすと、「あれ、今どこ?」と読者の脳がバグる。
自分の脳内が映画館なのか、図書館なのかを知れば、視点はただの制限ではなく武器になる。
視覚型は「映像を滑らかに+感情を言葉に」、言語型は「語り手を固定+映像感を足す」
そして視点を切り替えるときは必ず案内を忘れないこと。
次回は、このカメラとマイクをわざとズラして読者を驚かせる、「視点の裏切り」に進もう……かと思ったけどもういいかなぁ?
このカメラとマイクをきちんと使いこなせれば、もう大概のものは書けるはず。
技術的な基礎はもう十分な気がする。
この辺りまではギリギリ小説道場に載っている技法。
もっと色々知りたい人がいれば書くこと自体は何でもないけど。
もし先が知りたい人がいたらコメントくださいな。
その人のために書きましょう。
追記。
うっかり書き忘れてたけど、特に視覚優位の方には大切なこと。
それは光源!
場面の光源がどこか意識すると、格好いいシーン書きやすいぞ!
これについては東條零先生にご助言頂いたからそのまま書くね!
カメラワークと、次に大切なのは「光源」の位置だと思います。
よくあげられる例ですが、暗い室内で窓から光が差し込んでいる…
窓を背にして立つ人物。
その人がニヤリと笑う…
みたいな表現。
みんなやりたくなりますけど、光源を背にしていたら、表情は見えないんですよ…ってやつです。
リアリティの追求には、光源の位置も大切かと思います。
――まったくもってその通り。説明抜けてたのおお詫びしますね。
東條先生、ありがとうございます!
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