夏色哀歌

文鳥

夏色哀歌

きっと、どの季節よりも夏の寂しさが一番上等だ。


例えば蝉、蛍、朝顔なんかを見ればわかるように、夏の生き物は短命で、夏が眩いのは命の燃える輝きに満ちているからだ。


だからこそ夏には物憂げな春にも、枯れゆく秋にも、命が息を潜める冬にもない、 切実さがある。


気温がゆえでなくとも、寄り添うことさえはばかられるような、眩いからこそ際立つ暗がりがある。


他のどの季節よりも夏の空が一等青いように、異物が許されぬ哀しさがある。


ゆえに夏の寂しさは何にも優って美しいのだ

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夏色哀歌 文鳥 @ayatori5101

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