大人のやり方で挑む、最高峰の山

五來 小真

大人のやり方で挑む、最高峰の山

 大学生になり、ようやく夢が一つ叶った。

 

 ——日本の最高峰、富士山の登頂。

 

 ご来光も天気に恵まれて見れたし、もう思い残すこともなかった。

 

 帰りのバスは小学生がいて、少々賑やかだった。

 

「オレ、富士山登ったことある」

「あ、オレも。最高峰を制覇したって感じだよね」

「んー、それはどうかな? お前石碑見たか?」

「あー、山頂にあったね。……え? もしかして」

「そう、あそこにこっそり登ったんだ。——はい、お前石碑分低い~!」


 ……。

 子どもの戯言だ。

 石碑分低いからなんだというのだ。

  

 目をつむると、富士山の石碑に登る自分が見えた。

 

 いかん、ここにはもう来ないようにしよう。

 もっと大人にならなければ——。

 そう大人のやり方というものがある。

 

 こうして俺は、エベレスト登頂を果たした。

 日本の最高峰ではなく、世界の最高峰を制覇したのだ。

 これぞ大人のやり方というものだろう。

 

 そして俺は現地で有名になった。

 脚立を持って、エベレスト登頂を果たした日本人として。

 これに関しては大人げなかったと反省している。


 しかしこれは勘弁して欲しい。

 もしエベレストに石碑があったらと、不安で仕方なかったのだ。

 

 <了>

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大人のやり方で挑む、最高峰の山 五來 小真 @doug-bobson

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