第5話運命
久我さんの口から突然寿命宣告をされた。
「待って下さいよ…。二十歳って、三年もないじゃないですか…。私、今年で十八歳なのに…。」
これまでの人生が脳内に再生される。これが走馬灯ってやつなのか。
大した人生ではないけど、それでも死ぬのは怖い。
私は恐怖心から涙が止まらなくなってしまった。
「すまない。君にとっては酷な話だが、これが事実だ。現実だ。」
久我さんは毅然とした態度で続けた。
「でも、君は今、『死にたくない』と言ったね。なら抗え。俺もその手伝いをする。」
「手伝い…?」
「根本的な神嫁としての運命を変えるのは現段階ではほぼゼロだ。でも、君が抱えてる体質による苦痛は俺がどうにかできるかもしれない。
そこから少しでも君の寿命を伸ばすことにも繋がるかもしれない。」
「…確定ではないんですね。」
「あぁ。でもやらないよりかはいくらかはマシだ。」
冷たいイメージだった久我さんの瞳の奥が熱く滾ってる様な気がした。
「どうして…そこまで、してくれるんですか?」
藁にも縋る思いで私は聞いた。
「俺は神という存在が嫌いだから、奴らの鼻っ柱をへし折りたいだけさ。」
高慢な笑みを浮かべてふざけた様な返事を返した。
普通そんな答えが返ってくれば大抵の人は怒り散らすだろう。でも、私にはその答えが本気の答えに聞こえた。聞こえたせいでなんか気が抜けてしまい涙も気づいたら止まっていた。
「なら、私も久我さんにお世話になります。」
この人なら安心して任せられる。私はそう感じた。
「あぁ。任せろ。」
そう言って、優しげな笑みを浮かべる久我さんだった。
「まずは君のその神嫁としての体質だが、人間が持つには莫大すぎる霊力のせいで日常生活していく上ではあらゆる弊害が出てくる。」
私の体質について説明が始まった。確かに幽霊と接触するのは実はかなり精神をすり減らしてはいた。
「しかし、この莫大な霊力にはある人種の奴らにはとても有効な時もある。」
「…ある人種?」
「俺ら術師やそれに類する霊能力者の力を底上げする効果だ。分かりやすく言えば歩くパワースポットだな。」
「パワースポットって…。仮にそうだとしても分かるもんなんですか?」
そう聞く私に久我さんは続けた。
「実は俺自身の霊力はそこまで強くないんだ。さっきの視覚共有の術も使った後とんでもない疲労感に襲われる。こうして起きているのも出来ないほどに。」
そう言って自分の掌を見つめる久我さん。
「しかし、今こうしてなんの反動もなくいられるのは神嫁である君のお陰でもあるんだ。」
「私のおかげ?」
私、何かしましたっけ?
「術の発動の際に君の手を握る事により君から霊力を貰い賄っていたんだ。お陰で俺はそこまでの霊的消費もなく術を発動出来たのさ。」
ニヤリと笑う久我さんを見て私は何となく嬉しくなった。
自分の予期せぬ力が人の役に立てるのは嬉しいものだ。
「さて、その力の活用方法も含めて今回の依頼内容を確認してみよう。」
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