第1章 潮風に混ざる鉄 1-10

青年は、走りながら本開き呟いた

歌姫の声セイレーン

すると、人魚姫は微笑みながら大きく息を吸い込んだ

そして、彼女が口を大きく開けると

脳が震える程の超高音が辺りに響いた


「ぐうっ、あっ」


「あ、がっ」


頭が割れる様な痛みで

俺とメアは、思わずその場で膝をつく


「水遊び」


その隙を見逃さずに、青年がまたスキルを口にする

そして、人魚姫は指鉄砲を作りメアに照準をあわせた

だがメアは、膝をつきながらも銃を人魚姫にぶっ放した


流石の人魚姫もさっきの二の舞になると思ったのか

音波を出すのを辞めて避ける事に専念した

おかげで窮地を脱する事は出来たが

また、今のスキルがまた使われたらキツイので

俺は、対抗策を考える事にした


「メア、今のスキルの対策を考えるから

 時間を稼いでくれ」


「了解」


メアは、さっきの様に

銃を乱射しながら人魚姫と距離を縮めていく

人魚姫は、さっきとは違って避けながら水弾を撃ってメアが近づけないように牽制する


このままでは、近付けないと思ったのか

メアは、足元の石等を人魚のに向かって蹴飛ばし手数を増やす

そしてさらに、動揺を誘う為に言葉を紡ぐ


「さっき、気が付いたんだけど

 攻撃が連続で当たると再生力が落ちてたね」


メアにそう指摘されると図星だったのか人魚姫は、眉間に皺を寄せ苦々しい表情をした

人魚姫は、また避け続けるが

またメアがナイフの当たる距離まで接敵する


「さっきの様には、いかないよ

 "歌姫の声セイレーン"」


人魚姫の背後から、青年がまた先程のスキルを出す

だが、こちらも負けじと今書き上げたばかりのスキルを使う事にする


「メア、俺がスキルを言ったら大きな声で叫べ」


「了解」


「いくぞ、狼の遠吠え」


俺の声に合わせてメアが「あー」と大きな声でさけぶ

辺りは、人魚姫とメアの声が響き渡り

音と音がぶつかり合い相殺して、無音になる


「ちっ」


人魚姫が思わず舌打ちをする


「お嬢、それは行儀が悪いって」


それを青年がすかさず注意する

言われた人魚姫は、不機嫌そうにそっぽを向いた

その様子を見ながら俺は、メアに耳打ちする


「例の作戦決行だ」


「りょーかい」

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