第19話 炎柱の盾

『異形!?』


 シャノン様はその⾔葉を聞き、⾃分に⾒た目が似た彼⼥に視線を向ける。その⼈は表情を変えなかった。ただ腕組みをして⽚⽅の⼿を頬にそえ、⼈差し指だけを動かす。


「さぁ、神様!ワタシは貴⽅様に、⼈間の進化をご覧いただきました。どうでしょう、これでようやくワタシを選んでいただけますか!」


 なぜか、ギードはその⼈に対して告げる。しかし、相変わらず、無感情であった。興味がないと、そう⾔わんばかりに。


 ギードはしばらく期待の眼差しを向けるが、動かないでいる彼⼥に落胆した。


「まだ、ワタシには、⾜りないというのですね…。それなら、実際に試してみてもらうしかないですね!」


 そして、⼿を前に突き出し、⼤蛇に指⽰をする。⼝を開き、噛みつこうとする怪物に彼⼥は⾸に指を当てて、思案する素振りを⾒せる。


「なるほど、なるほど。この時代でも、現れるとは予想外だ。」


 危ない。そう思ったとき、僕の⾝体は動いていた。


「!なにして…。」

 その⼈の前に⼊り、剣を抜く。そして、⾆を斬りつけた。


「グギャアア!」


 斬り落とすまではいかなかった。だが、⼤蛇は痛みに悶え、頭を左右に⼤きく揺らす。そして、⾃分を攻撃した相⼿を睨みつけてくる。完全に対象を僕に変えたのだ。


 さて、まともに作戦もなく⾶び込んでしまった。ゲイル様からもらった瞳によって、相⼿の攻撃を予測することはできるが、巨体のくせにすばしっこい。


 アーノルドやシャノン様も応戦に⼊ろうにも、尻尾に苦戦しているようだ。


⼀体、どうすればと考えていたとき、僕はここにいないはずの彼を⾒つけた。


✳ ✳ ✳


ゼルコバ視点


 はぁはぁと荒い息。⼼臓が⽌まるのではないかと思うほど、⿎動が強くなる。肺が痛い、喉が渇く。

 

 でも、⾜を⽌めるわけにはいかなかった。牢に投獄されるところだったのを振り払って、森の中へと⾛る。


 ローラン兄さん、ドミニク兄さん、どうしてあんなことをしたんだ!許せない、でもあんな仕打ち、納得いかない!臆病で、⻭向かうことができなかった俺だけど、失いたくない。


 話せばわかるはず、早く、早く彼らの元へと急がなくては!それから、三⼈でオークスを探すんだ。皆で帰ろう、家へ。


 あの頃みたいに、仲良い家族になるんだ。森を抜ける、ようやく道が⾒えてきた!


 ⾶び込んでくる光に⼀瞬、瞼を閉じた。そして⾒えてきたのは、⼤きな⿊い怪物。それと対峙する重傷だったはずの弟、オークスだった。


 よかった、⽣きていた!安⼼したのも束の間、俺の存在に気が付いたオークスが、こちらを⾒て固まる。その隙に、怪物がオー クスに襲い掛かる。

 周りの者たちも反応しているが、間に合わない。


 やめろ、弟を、これ以上、家族をうばわないでくれ!


「オークス!!」

 叫び声をあげ、俺も無我夢中で⾛り出す。届け、届いてくれ!


 ーその時、⼤きな炎柱がオークスと⼤蛇の間に⽴ち上った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る