第4話  夜の気配と、羽音

 必要なのは、清い水と蓮の花粉だと、竜の方は言った。蓮の花は早朝でないと開かないため、それまでの時間はゆっくりしていろとのことだ。


「ご飯まで頂いてしまった。」


 アーノルド様が作った夕食は、暖かく優しい味であった。それを二人が自慢げに紹介してくるのが、微笑ましくて、なんだか寂しくもあった。

 シエナに心地の良い時間は初めてかもしれない。そもそも、兄たちが僕の分を食べてしまうため、ゆっくりと食事をとるのも経験のないことだった。


……足のズキズキと額の傷が痛み、眠れない。仕方なく、僕は与えられた部屋を抜けだし、外へと出た。気晴らしにでも風にあたろうと思ったからだ。


 しかし、思いのほか、外が寒く自分の身体を抱きしめるような体勢になり、震えをおさえようとした。すぐにでも引き返すことも頭に浮かんだが、じっとしているほうが痛みを感じると、その選択はなくす。

 そこに、シャノンが飛んできた。


『坊や。眠れなかったのか?』


「まぁ、そうですね。外の空気を吸えば、気分転換になるかなって。」


『そうかそうか。ではせっかく外に出たなら、あやつの姿でも一緒に見に行くか。』


「あやつ?」


 シャノン様は、再び空に戻ると、僕を導くようにして、ゆっくりと一定の方向に進んでいく。一体何があるのだろうと、痛みの走る足を気にしながら向かうと、その答えが見えてきた。








 

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