作者さまの一番大切にしている作品を読むというのは、緊張することです。
レビューするとなれば尚のこと。
いいかげんには読めませんし、書けません。
出会いのタイミングも、体質的に合う合わないもございます。
その上で、いえることは――
誰がなんと言おうと、圧倒的に美しいです。
緻密な世界観は、そのまま読み手の脳内に絵として立ち上がってきます。
繊細なタッチの挿し絵があったら良いな、などと僭越なことを思いましたが、読み進むうち忘れてしまいました。
「悪夢」の章が素晴らしかったです。
ヤナン君が墓前で涙するシーンは、キャラクターの体感を通して読む者を揺さぶります。
乾いたトーンで淡々と綴られているように見えますが、その底には失われた人々への哀悼が燦めいていて、神秘の水底を覗いた気にさせられる作品です。
テーマの深さ、世界観の密度、文章の確かさ。
どこをとっても非常にクオリティが高いです。
私はルシャとグラジさんに共感しました。
マユワちゃんはとても不器用だけど、繊細で優しい子。そっと隣に座っていたい。
「聖者」の章では、哲学から神学に踏みこんでいます。
ひとりの聖者の人生を解き、内面から「神」の概念を解体し考察してゆきます。
深すぎて理解が追いつきませんが、高度な哲学論であることはわかりました。
キャラクターが魅力的で、それぞれの道を全うしようと懸命に生きています。
人間という不確定な存在の明暗を、生きて書けている手腕が素晴らしいです。
彼らに寄り添いたくなり、高度な抽象概念をあがいて理解したくなるのです。
速度を落として読み返し、よく味わえばもう少しわかるかしら。
物語の可能性を、どこまで追求できるのか。
作者の内的宇宙の広大さに感嘆します。
どこまでも飛翔していただきたい。
人生を見る、見届ける物語。
死ぬまでの、これからの、これまでの、それぞれの人生を見ていく物語です。
彼、彼女たちの人生とその描かれ方を見た時、作品世界の幻想的な描写と登場人物が時折見せる現実的な感情の動きに心が波打ちました。
これはこの作品の登場人物に対する私の勝手な考えですが、ただそこから見ていて聞いていて欲しい、そう望まれているような気がしました。
けれど、私がその内容を誰かに伝えることは望まないと思います。誰しも自分の過去を勝手に語られたくはないでしょう。
これは彼や彼女の生きた物語であり、同時に彼や彼女だけの人生である、そう感じさせられる作品です。
以下、作者様に向けて。
作者様の読者への手紙とこの作品を読んだ時、とても心を動かされました。
このレビューで不愉快な思いをされましたら大変申し訳ございません。