第4話「惡夢の始まり」

―沈没開始まで残り12時間

とうとう当日になった。

ニュースではAI自動音声が避難場所を放送している。

「俺も必要な物持って行くか。」

そう言って、俺は自室に戻った。


部屋で荷物をまとめていると、外からサイレンが聞こえた。

『避難命令。避難命令。直ちに指定避難場所に避難して下さい。』

初めて本物のJ-アラートが俺の住んでるところで発令された。

「あと半日か、、、予備のスマホで写真でも撮っておくか。」

そう言って、家の中や外、近所の写真や動画を限界まで撮った。

そうして、俺は再び荷物をまとめ始めた。


―沈没まで残り8時間

「ん?揺れたか?」

不意に体が大きく横に揺れた。

恐らく沈む予兆だろう。

ただ、今のところは震度2程度だからまだ全然なんとかやっていける。


「よし。こんなもんかな。あ、そうだった。しっかりハルも連れて行かないと。」

ハルは俺の愛猫だ。

全身真っ白で思い出が多い唯一の仲間と言っていい程だ。

そんな思い出一杯で親友のハルを見捨てるわけには行かない。

「ハルだけは絶対に生き延びてほしいな、、」

そう言いながら俺はキャリーケースを持って家を出た。

最後の行ってきますを言って後を去った。

不意に涙が零れ落ちる。


―沈没まで残り5時間

とうとうタイムリミットが迫ってきている。

自國體の話によると、ペットは別便で行けるらしい。

一応、しっかりとしたシステムで飼い主とのはぐれは無いらしい。


「では、よろしくお願いします。」

そう言って、俺はハルを渡した。

自國體の人たちは優しく微笑み、

「必ずこの子の命は助けます。どうぞ、ご心配なく。」

と言ってくれ、心がホッとした。



―沈没まで残り2時間

「うわっ、また地震だ」

残り二時間となって、揺れが強くなっているし、増えている。

そろそろ、俺も東京マンデライトビルに避難しよう。

其処が唯一、まだ残っているらしい。


「フゥ、、、やっとついた、、」

俺は拳を握りしめ、階段を登った。

故郷ふるさとから別れるのは悲しいが、まだやっていける。

そう確信して屋上についた。


ただ、そんな希望を打ち砕くようにヘリが飛ぶ音がした。

「え、、、?」

一瞬理解ができなかったが、すぐに理解した。

「置いていかれた、、、、、?」

背筋を冷たい何かかが駆け抜ける。

即座に理解できたのはただ1つ、、、


”遅かった。” それだけだ。



[To Be Continued...]

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る