◆ゆか視点

友達と来た温泉旅行。

温泉なんて、正直めんどくさいと思っていた。


普段は仕事で忙しいけど、久しぶりの休みに、こうしてのんびりするのも悪くないなと思った。


「やっぱ温泉最高〜〜っ!」

友達のミカが、のぼせそうな勢いで声を上げる。


私も肩までお湯に浸かりながら、思わず笑った。


「久々だよね、こういう旅行」


「そうそう、仕事のことも忘れてのんびりしよ」


湯気に包まれた静かな空間。

外はもう夜で、星がうっすら見えている。


「でもさ、隣、男湯なんだよね」


ミカが湯船の縁に肘をつきながら、こっそり言った。


「ミカ、またそういうことを……」


「いや〜、ちょっとドキドキするじゃん」


そう言いながら、ミカは悪戯っぽく笑う。


正直、私はそんなことでときめいたりしない。


「スンがいるなら、話は別だけど」


「ゆかは本当に一途だよね~。推し命だね!」



湯気の向こうに見える星空が、やけにきれいだった。

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