ある人魚の話

@graveofkiyo

こどもといっしょ

 雨がいっぱい降っていたよ。

ぼくは自分の部屋にいました。

ふわふわの黄色いカーペットの上に寝ていました。

そしてベランダの方を見ていたの。

その日はカーテンがなかったから、よく人魚の姿が見えたんです。

 

 どうしてベランダに人魚がいるんだろうと思って、ママとパパに聞いてみたけど教えてくれなかった。パパは笑って「真波は想像力が豊かだね」と言ったけど、ママはその話をすると具合が悪くなるみたい。

 お姉ちゃんなら何か知ってるかなと思って電話できいてみたけど、「夢でも見たんじゃないの」と相手にしてくれない。

 学校の友達には話してないよ。

だって人魚がかわいくないんだもん。

上がニンゲンで下がサカナ。

体はアニメで見たのと同じだけど、髪が一本もなくつるっぱげで多分おじさん。ラグビーの選手みたいにマッチョだよ。

 その人魚は水の中を泳いでいるわけじゃなくて、ぼくの部屋のベランダにいるんだ。宙に浮いていて、ひらひらと踊ってる。ときどき楽しいみたいで口を開けて笑うけど、オオカミとかライオンみたいに鋭い歯を持っている。あれって歯じゃなくて牙っていうらしいね。こないだお姉ちゃんに教えてもらったんだ。


 あーあ。

もしもうちょっと人魚が可愛かったら――そうだなあ、同じくらいの年の子だったら窓を開けてたかもしれないな。人魚と友達になれたら楽しそうでしょ。

 でもそうしなくてよかった。

だって、そうしていたらさ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

ある人魚の話 @graveofkiyo

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る