19話 禁忌の花園
放課後の校舎裏。夕陽が長く伸びる影を染め上げる中、ユリはひとり静かに佇んでいた。
胸の奥に、昨日スイレンから託された“白い睡蓮”の花びらがまだ冷たく残っている。
彼女は自分の正体に、少しずつ近づいていた。
――封印された記憶。
ある夜、幼い頃に見た夢。
薄暗い寺院の奥、黒百合の花に囲まれた祭壇。
そこには、祖母の姿があった。
「ユリ、覚えておきなさい。あなたは代々、
幼いユリに差し出されたのは、黒百合の髪飾りだった。
「これはあなたの力の証。だが使いすぎれば、体と魂を蝕む」
夢の中の祖母の言葉が、今も胸に響く。
「私は、どうすれば……」
独り言のようにつぶやくと、その時だった。
校舎の向こうから、かすかな唸り声と共に、不穏な気配が迫る。
「――また、教団の者たちが動いている」
背筋が凍る。
そこへ突然、スマホが震えた。
画面には「ローズからのメッセージ」とだけ表示されていた。
中身はただ一言。
『終わりは、近いわよ。』
ユリは強く握りしめた拳を解き、静かに夜の街へと足を踏み出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます