7話  運命の折りたたまれたページ

ユリの部屋の黒百合が淡く光を放ち始めると、その光は徐々に部屋全体を包み込んだ。

痛みは増していくが、それとともに何か温かいものが胸の中に満ちていく感覚があった。


その時、不意に窓の外から冷たい風が吹き込んだ。

カーテンが揺れ、外の街灯が一瞬消えかける。

ユリは顔を上げ、暗い夜空を見つめる。


「この力…まるで、エンド・フラワーそのものが私に語りかけてくるみたい……」


彼女の心に響いたのは、無数の魂たちの嘆きだった。

「救いは破滅にあるのか?」と問い続ける声が、静かに、しかし確かに届く。


同時刻、都心のどこかでは花弁の教団のメンバーが一堂に会していた。

薄暗い倉庫の一室。スイレンが中心となり、他の教祖たちが各々の感情をぶつけ合いながらも、戦略を練っている。


ローズは拳を握りしめながら言う。

「焦りばかりじゃ進まない。破壊こそが答えよ」


シャクヤクは冷たく笑いながら、怒りを込めて口を開く。

「誰も信じられないなら、私たちが力で支配するしかない」


ロベリアは不敵な笑みを浮かべて、周囲の緊張を楽しむように言った。

「罪悪感を使って、奴らを狂わせてやろう」


マリーは悲しげに吐息を漏らす。

「悲しみは力になる……でも、私たちの未来は?」


ダリアは背を向け、独り言のように呟く。

「信じることは裏切りに繋がる……すべては計算通り」


キキョウは静かに、皆を見渡した。

「孤独が私たちを繋げる。離れないで」


スイレンは皆の言葉を遮るように言った。

「焦るな。まだ全ては動いていない。未来視で見た結末は、最悪よ。でも私たちが動かなければ、もっと酷いことになる」


彼女は不安げに目を伏せる。

「ユリが覚醒すれば、私たちは終わる。でも、それが救いかもしれない…」


教祖たちの表情が揺れ動く。

それぞれの過去が彼女たちをここまで導いた。

けれども、誰もが確信できない未来に怯えていた。



ユリの部屋では、光が消え、静寂が戻った。

彼女はゆっくりと立ち上がり、鏡の前に立つ。

鏡に映るのは、少しだけ髪が伸び、瞳が鮮やかな白に輝く自分の姿だった。


「覚醒の始まり……」


彼女の胸には、黒百合の呪いと、浄化の巫女としての誓いが同居していた。

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