第7話『エピローグ:わたしの物語は終わらない』
わたしたちの戦いは、終わった。
繁華街の喧騒が、再びわたしたちの耳に届き始める。
もう、誰もわたしたちを観測していない。
もう、誰もわたしたちの人生を、物語として消費しない。
わたしたちは、わたしたち自身の人生を、わたしたち自身の力で、歩んでいく。
わたしは、もう一人のわたしと、手をつないで歩いていた。
彼女は、わたしと同じ顔で、わたしと同じように、にこりと微笑んだ。
「ありがとう、アリス。あなたと出会えて、本当に良かった」
彼女は、そう言って、わたしの手を離した。
わたしは、彼女の言葉に、少しだけ寂しさを感じた。
「どうして? 一緒に、新しい人生を歩もうよ」
わたしは、彼女にそう問いかけた。
彼女は、わたしを見つめながら、静かに答えた。
「わたしは、あなたの『観測者』。そして、あなたの『味方』。だから、わたしたち二人で、この物語を終わらせることができた。でも、これからは、あなた自身の人生を、あなた自身の力で歩んでいかなければならない」
彼女は、そう言って、わたしの目の前で、光の粒となって消え去った。
わたしは、その光景を、ただ呆然と見つめていた。
もう一人のわたしは、わたしの中に、溶け込んだのだろうか。
いや、違う。
彼女は、わたしの中に、ずっといたのだ。
わたしが「物語」に抗うことを決意したときから、ずっと。
わたしは、一人、歩き出した。
もう、誰もわたしたちを観測していない。
もう、誰もわたしたちの人生を、物語として消費しない。
わたしは、わたし自身の人生を、わたし自身の力で、歩んでいく。
それは、誰かが決めた物語の「結末」なんかじゃない。
わたしたちが、わたしたち自身で決めた、新しい物語の始まりだった。
わたしは、繁華街を抜け、いつもの通学路を歩いていた。
空には、夕焼けが広がっていた。
赤く染まった空が、まるでわたしたちの戦いを祝福しているかのようだった。
わたしは、空を見上げ、にこりと微笑んだ。
もう、わたしの人生は、誰かの物語じゃない。
わたしの人生は、わたし自身のもの。
わたしは、わたし自身の物語を、これから、わたしの手で、書き始める。
そして、わたしは、この物語を、誰にも邪魔させない。
わたしは、わたし自身の物語を、わたし自身の力で、終わらせる。
それは、わたしたちが、わたしたち自身で決めた、新しい物語の始まりだった。
さあ、始めようか。
わたしの物語は、これから、わたしの手で、書き始められる。
これは、「売れる展開」ではなく、「わたしの物語」を選び続けた少女の、世界最終書き換え戦争の記録であった。
『観測者アリスは物語を喰む』 @ruka-yoiyami
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