政治評価サイトVoteScope
ちびまるフォイ
わかりやすいかんたんせんきょ
「このままじゃこの国はダメだ!
誰もやってくれないなら、私がやらなくては!」
日々変わらない生活。
テレビで繰り返し報道される政治の怠慢。
ついに限界を迎えて政治家になることを決めた。
「私が当選したあかつきには消費税を-10%を実現し!
国民のみなさんは買い物すればするほど、
お金がキャッシュバックされ、経済が回ります!!」
毎日街頭演説を行い、選挙バイクで爆走。
他の政治家と比較しても絶対に負けないほど努力した。
そして結果はーー落選。
「あんなに頑張ったのに!!
街頭じゃみんな優しくしてくれたのに!!」
政治本部でうなだれていると、秘書が気まずそうにやってきた。
「〇〇先生……」
「なんだ。今は自分の力不足を嘆きつつ
この国の迎えるお先真っ暗な未来を想像して悲しんでいるのに」
「まずご自身の敗因を振り返ってみては?」
「敗因……か。そうだな、一体何がいけなかったんだ。
もっとわかりやすく公約を伝えるべきだったか。
いやもっとメディアに露出して認知を深めるべきだったか」
「いえそうではないです」
「なに? 秘書くん、君は何が敗因かわかってるのか?」
「はい。先生の
「てぃあー?」
「これを見てください」
秘書がPCで表示したのはレビューサイト。
そこには自分の顔写真と評価がずらりと書かれている。
「なんじゃこりゃあ!?」
「ご存じないのですか? 政治評価サイト
「俺の評価★2.2なんだけど……」
「そりゃまだ当選してないので政策実現率も低いですから」
サイトを巡回してみると、自分だけでなく政治家の評価が書かれていた。
政治家の発言力の強さを一覧化した「Tier表」
政策実現率を評価したスコア。
政治家の考え方をグラフにした「政治パラメータ」
さらに利用者は「みんなのコメント」にてやり取りもしている。
「俺ってTier:C帯か……なんか弱そう」
「それにこの選挙区はTier:A帯がいるので、
表もそっちに流れちゃうんでしょうね」
「しかしあの人の政策は男子全員パンイチ計画だぞ?
あんなの通されたらこの国の終わりだ」
「とはいえ人気があるのも現状です」
「ええい。このサイトの評価なんかアテにしてちゃダメだ。
こんなものを言い訳にしているうちは、この国をよくできない。
地道な努力がきっと評価として返ってくるはずだ!!」
敗因はサイトのせいではなく、自分の努力不足。
次の選挙ではもっと広くアピールした。
そして結果はーー。
落選。
「うわぁぁぁあん! また負けたぁぁぁ!!」
「先生、政治本部せまいんですから暴れないでください」
「1日の時間を伸ばす魔法の時計で1日48時間頑張ったんだぞ!?
Tier:C帯しかいない選挙区で出馬した!
それでもなお負けるって納得いかない!!」
「まあ、そらサイトの評価みますから」
「またかよ!!」
「先生見てください。先生の評価は★2.2~2.5が平均です」
「うん……」
「でも他の政治家は★3あたりが平均です。
有権者は★が高い方を評価するに決まってます」
「待ってくれ! それはおかしいだろう!?
ちゃんと政策を見ればどちらに投票すべきか明らかだろう!?」
「じゃあ逆に聞きますけど。
〇〇先生が、レストランにいくとき★2と★3。
どちらの店を選びますか?」
「★3に決まってるんじゃん。あっ」
「そうです。みんな評価だけ見れば満足なんですよ。
その店がどんなメニュー提供しているとかは気にしないんです」
「ああ、くっそ~~! 忌々しいサイトめ!!」
政治家の評価はこれまでの過去の成績を元に評価される。
それだけに、実際に政治を担った人間とそうでない人間。
この時点で有利・不利が発生してしまうのも事実だった。
若い頃に評価が良かったが今は見る影もない悪徳政治家。
業者にお金を渡して意図的に評価を釣り上げる政治家。
もはや選挙の主戦場は街頭ではなく、サイトへと移行してしまっていた。
「で、どうするんです先生?
裏金渡せというなら、あなたを見限りますよ」
「そんなことするわけないだろう……。
しかし方法も思いつかないのは事実だ……」
自分のように古い人間ではとても太刀打ちできない。
当選実績も無いので、華やかな経歴もない。
やれることは結局同じことしかできなかった。
「私が当選したあかつきには、消費税を-10%にしまーーす!!」
街頭でただ叫び続けるだけだった。
たとえみんなサイトの評価しか見なくなったとしても、
自分が取れる手段はひとつしかなかった。
そして結果はもちろんーー。
「せ、先生!! 当選、当選です!!」
「なんだって!?」
選挙の結果が出た。
新人でなんの後ろ盾もない自分がTier:Aランク帯の政治家を越えて当選。
歴史上まれにみる大逆転劇となった。
「やったーー! これで政策実現に一歩踏み出せるぞ!」
「やりましたね、先生!!」
「秘書くん、やっぱり私は確信したよ。
どんなにサイト評価がはびこっていたとしても
有権者が人である以上、ちゃんと人を見るんだって」
「……」
「有権者の目はちゃんと私を見てくれていた!
現実がサイトに勝った証拠だよ! 秘書くん!!」
高らかに宣言した。
秘書はまた気まずそうに手を上げた。
「あの、先生……。今、有権者が何を元に投票しているかご存知で?」
「はっはっは。なにを今さら。あの政治評価サイトだろ?」
秘書はそっとアプリを見せた。
「サイトなんてもう古いです。
今、有権者は政治予報アプリを見て投票先決めてるんですよ」
政治予報アプリでは自分の政治貢献度に晴れマークがついていた。
きっとこの国を良くしてくれるだろうという判定結果らしい。
「それじゃ別に俺が評価されたわけじゃなくて……。
単に予報アプリで晴れマークだったから当選したってこと?」
秘書はただ目をそらした。それが答えだった。
政治評価サイトVoteScope ちびまるフォイ @firestorage
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