彼女の愛が重い

のんびりした緑

第1話 束縛系

ピピピと目覚ましが鳴るのを止め、重い体を起こしながら、むくりと起き上がってリビングの方に出向いた。


「おはよう足立あだち君」

「おはよう三日月」


俺の名前が足立陽あだちはるで、足立君と呼んだのはキッチンに立って料理している三日月朔也みかづきさくやという女だ。

俺と三日月は恋人関係で現在同棲するほどの仲。

容姿も黒髪のセミロングで整った顔たちと、大和撫子って感じの凛とした美しい女で今もこうやって俺の分の朝ご飯も用意してくれる人だ。

皆に自慢してやりたい彼女……と言えるんだけども……。


「今日はお昼に何処かに出かけようかな」


それはそうと良い天気だし、外に出かけて面白い物が売ってないか見に行きたいし、外食とかも良いな。お昼はチェーン店でも寄るか?


「どこかに行くというのなら、私も行くから」

「はぁ……」


またこれだ。

1人で何処かに行こうとしても三日月も付いてくるから寄りたい所に行けない。


「ちょっと散歩する程度だよ」

「なら一緒に散歩でもしましょう?」


出かける先を変えても付いてこようとする。

いくら彼女といえど、1人の時間が無いと思えるほどに彼女からの束縛が激しいと良い所の全てが台無しになってると言わざるを得ない。正直うんざりしていて別れを切り出したいと思っている。


「なあ三日月」

「先に言っておくけど、別れるなんて絶対に許さないんだから……」


何を言おうとしたのか感じ取ったのか、パンッ!って包丁で食材を切る音を意図的に強く出して脅して来た。こんな感じで別れ話を言おうとすると言わせないとばかりにこうやって釘を刺してくる、所謂ヤンデレ……ここまで来るとメンヘラというべき類だ。

下手に別れを切り出したら刺されそうで怖いって感情が湧くと別れ話を切り出すのも難しい。


「分かったよ……一緒に行こう」

「最初からそう言えば良いのよ」


なんだよこの高慢な女……こう思う事も増えてきた。


「最初ははるって呼んでたのになぁ……」


最初は足立君呼びではなく陽と呼んでいた。それが、いつの間にか足立君呼びに変わっていた。

はぁ……三日月の訳の分からん愛が変な方向に向いてしまった。なんて重い女と付き合ってしまったもんだ。

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