【声劇台本】拙者は侍ベイビー

水縹❀理緒

作:水縹 理緒

拙者は侍ベイビー



時代など越えていけーーーー



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〈赤ちゃん〉

侍ベイビー

しっかりと物申す

名前は田中 源三郎


〈母上〉&〈父上〉

侍ベイビーの親

母上の名は田中 百合

父上の名は田中 聡(さとし)



赤ちゃん:性別どちらでも!

母上:♀

父上:♂



ーーーーー



父上:う、産まれたぞ!もう産まれたぞ!ついさっきまでお腹にいたのに


母上:えぇ…えぇ…そうね…早くて今凄くビックリしてる


父上:生まれた!はあーーー生まれた僕たちの子供が生まれた


母上:落ち着いてください


父上:な、泣き声がないがこれは大丈夫なんだろうか。やはりもう一度先生に


母上:あーもー先生も大丈夫だって…



赤ちゃん:おんぎゃあ



母上:え


父上:ん?



母上:……気のせいよね。凄く達観した声が聞こえた気がした……あ、サトシさんテレビつけてくれない?


父上:わかった。今だと…時代劇やってるね

【若き源三郎は大人でござる】ってやつ


赤ちゃん:ばぶっ!


母上:あぁ、それがいいわ。私このシリーズはネットフリフリで追いかけてたのよね。

子供の源三郎が、実は大人で若様なのよ


赤ちゃん:ばぶっばぶっ


母上:あら。このテレビみたいの?


赤ちゃん:…


母上:…時代劇が気になる?


赤ちゃん:…


母上:源三郎


赤ちゃん:ばぶ


父上:…自分の名前と思ってる?


母上:そういうこと?



赤ちゃん:我が名は源三郎。遠き輪廻の果てよりこの地へ舞い戻った。拙者の成すべき事はただ1つ。ばぶばぶ日常を送る事だ



父上:拙者は侍ベイビー




父上:ただいまー。ほーら、源三郎。いい子にしてたかー?パパが可愛いお人形さん買ってきたよ〜音が鳴るんだよ〜


赤ちゃん:ばぶぅ


父上:……げ、源三郎。ほーら。捕まえてごら…


赤ちゃん:ばぶぅ (足でキャッチしている)


父上:あ、足で捕まえたらお行儀がわる…ちょ、なにこの力?!強いんだけど?!


母上:もー帰ってきて何事ですか?あなた、少し静かにして?どっちが赤ちゃんか分からないわ


父上:いやちょっと見て?!足で掴まれてるのに取り上げられないんだけど!


母上:あーはいはい。軟弱軟弱


父上:ねぇ何で?!違うよね?!結婚式に君をお姫様抱っこした僕は幻?!ほら、筋肉がこんなにモリッと…


母上:そんな事もあったかな


父上:ひどい!腕の中であんなに頬を赤らめて可愛くキスをしてくれたのに


母上:おだまり


赤ちゃん:ばぶぅ


父上:うおっ


母上:あ、源三郎いい子ね〜お人形さん離せてえらいね〜ママ、ミルク作ったからそろそろご飯にしましょうね〜


赤ちゃん:ばぶぅ


母上:ほーら抱っこするから源三郎、ばんざい。はい、あっちにいきましょうね〜


父上:うぅ…2人してひどいよぉ…百合ちゃんは最近源三郎の事ばかりだし、なんか赤ちゃんのはずの源三郎は源三郎で、そこらの赤ちゃんとは違う喋り方するし…本当に赤ちゃん?僕たちの子供?はぁ…パパ自信なくなっちゃう。いいんだ。もうパソコン部屋に引きこもって、このマジックロリロリプリンセス人形の撮影会するから…



母上:源三郎。ミルク飲みましょうね〜


赤ちゃん:ばぶっ


母上:あら〜自分で持って飲みたいの?いい子ね〜でもまだ源三郎には早いから、ママがもってるからね。ゆっくり飲むのよ


赤ちゃん:(ごくごく飲む)


母上:沢山飲んでえらいわね〜


赤ちゃん:プハッ…おかわり


母上:ん?


赤ちゃん:ハッ…………ばぶ


母上:いい子ね〜じゃあちょっと苦しいかもしれないけれど、げっぷしましょー


赤ちゃん:うっ…


母上:吐き戻しちゃったり苦しくなっちゃうからね。ごめんね〜


赤ちゃん:……げぷっ


母上:上手に出来たね。じゃあ次はお昼寝しましょうか。ママの部屋に行こうね〜


赤ちゃん:ばぶっ




父上:キラキラマジックで皆のハートはポイポイキャッチ〜目を合わせたら、キャベツになっちゃうぞ☆

……よし、今日も推しはかわいい。新しく手に入ったフィギュア何処に飾ろ〜かなっと



赤ちゃん:父上


父上:うわぁ?!え、何?!


赤ちゃん:申し訳ないのだが、この


父上:ちょちょちょドアノブにぶら下がっちゃダメでしょ?!え?何なにしてるのほら、


赤ちゃん:かたじけない。驚かせたか


父上:……疲れてるのかな。多分きっと幻聴だこれは。棚に飾ってある魔法少女達が話してくれているんだ。源三郎は赤ちゃんだから喋るはずが


赤ちゃん:密かに想いを寄せているおなごがおる事も、よく分からぬ詠唱を唱え、悦に浸っておる事も母上には秘密にしておく。安心なされ


父上:今気にしてるのはそこじゃないんだ


赤ちゃん:頼みたい事があるのだ


父上:ちょ、え?まって、本当に喋ってる…?これは現実?


赤ちゃん:父上、聞いてくれ


父上:二足歩行するのも早くない?!生後2ヶ月だよ?分かんないお父さん初めてだもん!初めての彼女、初めてのチュー、初めての結婚と育児。いつから喋るのかも分かんないけど、早すぎるのはわかるんだよ!


赤ちゃん:…致し方なし。これを見よ


父上:よだれかけの後ろってポケットあったっけ……何これ?チラシ?


赤ちゃん:なんとかろりろーり人形のチラシだ


父上:え?!どこで覚えてどこで拾ってきたの?!朝見た時こんなチラシなかったよ?!


赤ちゃん:今なら全て100園であるぞ


父上:安すぎて心配になる


赤ちゃん:この紙は父上の好物とお見受けした。引き換えに、拙者の頼みを聞いてけろ


父上:……色々聞きたいことがあるけど、まぁいいでしょう。我が子の頼みを聞くのは父の役目だからね。言うがいい


赤ちゃん:2つある


父上:ん、聞こう


赤ちゃん:1つ、母上には拙者が喋れる事を秘密にして頂きたい


父上:理由は何だ?そなたの母上であり、我が愛しき百合殿もさぞ、お喜びになるのではないか?


赤ちゃん:母上は赤子を所望しておる。拙者は赤子になりきれておらぬ故、失望させたくは無いのだ


父上:あれ?僕は?僕の心の心配とかはしてくれたのかな?


赤ちゃん:2つ目


父上:スルーされた悲しい


赤ちゃん:父上


父上:なんだ


赤ちゃん:漏れた


父上:漏れた?!


赤ちゃん:今しがた、漏らした故、オムツを持ってきてくれぬか


父上:今?!あー!!!漏れてるー!!えー?!


赤ちゃん:かたじけない。では置いてゆくぞ


父上:オムツここで脱がないで?!かたじけない、じゃないよ?!拭かないと!


赤ちゃん:父上、頼んだぞ。拙者は母上の横で目を覚ます役割が残っておるゆえ


父上:あぁ……推しのセール情報に釣られた結果が……くちゃい( •́ฅ•̀ )

………あれ?源三郎?え?!もう居ない?!すっぽんぽんで戻っちゃった?!



母上:…ん、あれ。私寝ちゃってた……あ、源三郎?!


赤ちゃん:……ばぁぶ


母上:あ、ごめんね、起こしちゃったね〜

…よかった。源三郎が何処か歩いていったような気配がしたから……ん?源三郎、ずぼん、どうしたの?


赤ちゃん:ばぁぶっ!ばぶー!


母上:オムツも取れてるし…それより濡れてる…?あらやだ、おもらし。ちょっとまっててね。すぐキレイキレイするからね〜

あなたー?源三郎のズボン知らない?


赤ちゃん:ばっ…ば、ぶ!ばぶぅ!


母上:大丈夫よ〜すぐ拭かないとお肌、痒い痒いなっちゃうから。少し我慢してねー


赤ちゃん:ばぶーーー


父上:な、何。どうしたの


母上:ねぇ、源三郎おもらししちゃったみたいなんだけど、オムツもズボンも無くて。私寝ちゃったから何が起きてたのか分かんないの。何か知らない?


父上:…え、あーー…と


母上:もし私が寝てる間に何か変な人が入ってきたり…


赤ちゃん:ばぶばぶばぶばぶばぶ…


父上:…あ……んー…百合が寝てたから、こっそり変えようとして脱がしたんだ


母上:……あなたが?


父上:ほら、最近育児に家事に…凄く負担かけちゃって、百合の事も考えなきゃいけないのに出来てなかったから。寝られるなら少しでも寝て欲しくて。源三郎、おもらししてぐずってたからさ。


赤ちゃん:ばぶ


母上:…サトシさん


父上:ごめんね。遅いかもしれないけど、しっかり2人を支えていけるようになるから。


母上:……ありがとう。私もサトシさんに冷たく当たりすぎてたかも。ごめんなさい


赤ちゃん:ぶぅ


父上:いいんだ……。あ、ほら。これ、源三郎のズボンとオムツ


母上:ありがとう


父上:ごめんなー。ズボンどこにあるか分からなくて寒い思いさせちゃったね


赤ちゃん:ばぶ


母上:仕方ないわよ。全部私が1人で管理しちゃってたから……2人でこの子の親なのに。

はい、これでよし。


父上:そうだ、ご飯の準備は僕がするから。何か食べたいものある?


母上:んー…そうね……あ。


父上:ん?


母上:私、貴方に謝らなきゃと思って……サトシさん、お人形さん大好きでしょ?


父上:う、うん。好きだね…


母上:ちょっとその熱量に嫉妬なのかモヤモヤしてイライラしちゃったの。それで、確かこの辺に……その貴方の好きなお人形さんセールのチラシが入ってて……見た時に困ればいいわって思って隠してたの。ごめんなさい。サトシさんが欲しがってた子が載ってたの……あれ?ここに入れたはず……


父上:あ、いや!うん!大丈夫だよ!もう貰ったし


母上:貰った?


父上:あ、いや。今日は幸せな事が沢山あったから!確かに隠されてたのは少し悲しいけど、でもそれよりも僕達2人の、ね!事の方が大事だから!


母上:……?え、えぇ。そうね


父上:うん!さぁ、何が食べたい?


母上:んー……じゃあ天ぷら


父上:わかった。源三郎はミルク買ってくるからな〜待ってるんだぞ〜


源三郎:芋がいい


母上:ん?


父上:……あっ……ぼ、僕はフライドポテトか、買おうかなって!


母上:あ、あぁ……サトシさんも好きな物買ってきて


父上:う、うん!わかったー!行ってきます!




父上:ふぅ……食べた食べた……。そしてチラシは死守!ふふーん沢山買っちゃった〜シリーズコンプリートしちゃった〜嬉しくてコーヒー豆買ってミルでひいてオシャレに入れちゃった〜


赤ちゃん:父上


父上:はいいー!!!……毎回危ない部屋の入り方止めてくれるかな?ほら、ドアノブ離して。おろすよー


赤ちゃん:かたじけない。して、父上


父上:何じゃ、我が子よ


赤ちゃん:母上はお眠りになられたので、語り合いたく思い参った


父上:お、おう。申してみぃ


赤ちゃん:母上は寂しがっているというのにおなごばかり眺めておるのは如何なものか。拙者は母上が好きだ。泣かせるのは許せぬ


父上:はい、本当にすみません


赤ちゃん:では、1つ頼みがある


父上:申せ


赤ちゃん:母上に接吻をするのだ


父上:言われてするものでは無いぞ


赤ちゃん:ばぶ……?


父上:赤ちゃんになってもダメです


赤ちゃん:バレておったか


父上:でも……今後はしっかり愛を伝えていくよ。言わなきゃ伝わらないもんね。百合はもう寝たんだっけ


赤ちゃん:うむ


父上:じゃあ今からこっそり家事してくるから、高いところとか変な事しないでよ


赤ちゃん:わかった


父上:ふぅ……それじゃ、食器洗いと洗濯と……後は明日のお弁当も軽く作っておこうかな


赤ちゃん:父上


父上:んー?


赤ちゃん:漏れた


父上:またーーー?!?!




ーーー終わりーーー






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