第19話 ダンジョンボス 四天王戦
四天王達の力が高まり、さらに脅威度が増された様子だったが俺は至って冷静だった。
何故なら、いつもとは違い心強い味方がいるからである。
「従者召喚! 来い紅葉!!」
俺がそう叫ぶと、目の前に赤き魔法陣が浮かび上がるとそこから飛び出す様に満を持して現れた。
紅葉はゆっくりと顔を上げ、般若の面を四天王達へと向けた。
紅葉の顔を見た四天王達は何かに気が付いたかのように動揺を見せ始める。
「何っ!? き、貴様……その女をどこで!?」
俺にそう問いかけるタモンテンの様子は明らかに驚き上がっている様子であった。
「地下で拾ったのさ」
「拾った!? まさか、その夜叉姫を手懐けたとでも言うのか!?」
「そうだが何を驚いている?」
「その女は我らが封印していた鬼神……黒き怨念と共に生きるやつの気性は誰にも止められぬほど荒く、神々から脅威とされたその夜叉を人間如きが……」
「……そうなのか?」
俺がそう紅葉に語りかけると紅葉は恥ずかしそうに俺に抱きつき、自分の顔を見せない様に身体を使って俺の視界を遮った。
「……そうには見えないけど」
しかし、この紅葉の様子に四天王達の空いた口が塞がっていなかった。
「あの獰猛な夜叉が人間に懐いているとは……このままでは如何!! 我らが今ここで首を取らねば!!」
そう叱責すると四天王達は一斉にそれぞれの攻撃方法で俺たちに向けて襲いかかってきた。
奴らの速度は確かに速かった。だが、主人に危険が迫っていると気が付いた時の紅葉の反応速度の方が一線を凌駕していた。
紅葉は即座に俺から正面へ振り返ると同時に腰に付けた刀を抜きながら横一文字に振り切る。
紅葉のたった一薙の一閃でジコクテンの矛、ゾウチョウテンの三叉戟、コウモクテンの魔法触媒の巻物を、そしてタモンテンの巨大な右腕を同時に切り裂いたのである。
「ば、馬鹿な!? 我々に攻撃は効かない筈!?」
四天王達には物理攻撃耐性が備わっているが、紅葉の持つ剣『妖刀・鬼丸』の【物理防御低下攻撃】によって相手の耐性は相殺される。
更に、紅葉の持つスキル【防御貫通】も相まって相手の防御力はほとんど意味をなさない状態になるのだ。
紅葉の後ろ姿から感じる殺気は敵として戦った時のものではなく、主人を外敵から守るために発せられているものだとかんじとることができた。
紅葉は腰に付けたもう一つの刀を抜くと四天王に向けて構えをとる。
静かに深く息を吸い込むと二刀の刃を激しく擦り合わせると刃に炎が灯った。
「……っ!!」
そして、紅葉は炎の刃二刀を一気に薙ぎ払うと荒ぶる火炎の熱波が四天王達の身体を包み込む。
「ぐあぁあああああああああああああああああああああ!!!!!」
「熱いっ!? 熱い!!」
「身体が焼けるぅううううううううううううううう!!!!!!」
ジコクテン、ゾウチョウテン、コウモクテンの3体は紅葉の生み出した炎によって苦しみ悶えている。
「ぐぬぅ!? おのれぇええええええ!!!! ふんっ!!!!」
タモンテンは身体に纏わりついていた炎を即座に打ち消しながら、青い膜を身体に張らせた。
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紅葉が【
【永炎一閃】:敵全体に耐性無視効果の炎属性攻撃を行う。レベルが上がるほど、耐性無視効果と範囲が上昇する。
ジコクテン、ゾウチョウテン、コウモクテン
残りHP1000/9000
タモンテンがスキル【多重結界】を使用しました。
【多重結界】:現在受けている全ての攻撃をかき消し、自身の持つ耐性が一段階上昇する。レベルに応じて防御力が増加。
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即座に情報が俺のAdamに映る。
紅葉は想像以上の働きぶりだが、やはり四天王を仕切るタモンテンも中々やる。
それでも、紅葉の前では無意味だろう。
熱波に苦しむ3体を素通りして、紅葉は一気にタモンテンの方へと疾走する。
「この修羅がぁあああああああああああああああ!!!!」
激昂し、向かってくる紅葉へ向けて巨大な拳を叩きつけるが、紅葉は軽々と交わしてタモンテンの腕へと飛び乗る。
右腕から胸へと翔け走り、到頭タモンテンの頭上へ来た。
紅葉は飛び上がり、落下しながら二刀の刃でタモンテンの身体を舞うように切り刻む。
「ば……馬鹿な……っ!!」
タモンテンのその硬い身体は紅葉の力で切り裂かれ、ボロボロとその場で崩れていった。
紅葉のもう一本の刀、『妖刀・宗近』には【
地面に降り立った紅葉は二刀を鞘へと戻した。
そして、指揮者を失い、虫の息の鬼神3体は紅葉を見るとおびえた様子で後ずさる。
紅葉は仮面を外し、3体に向けて素顔を見せると鬼神たちはその場で硬直したかと思うと、紅葉の前で膝から項垂れた。
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紅葉が 【鬼神覇気】を発動しました。
ジコクテン、ゾウチョウテン、コウモクテンが戦意喪失したため、挑戦者の勝利となります。
これにより挑戦者の勝利となります。
ダンジョンボスに勝利した為、以下の報酬を獲得。
ドロップ品:不明(未鑑定品)*4
:
:護法ノ霊薬
小川圭太様のレベルが上がりました。
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あれま、俺の出る幕もなく、紅葉だけで終わってしまった。
紅葉はさっきまでの激しい戦いなどまるでなかったかのように涼し気な出で立ちでこちらへと近づいてくる。
「ご苦労様、紅葉」
俺がそう声をかけると、紅葉はいつも通り俺に抱き着いてくる。正直、もう慣れた。
「あとは俺がやる。お前は休んでろ」
俺の言葉に少し悲し気な様子を見せたが紅葉は最後、口元の面を少し外して俺の頬に一度口づけをした後に消えていった。
やれやれ、これはかなり好かれちまったな。
さて、邪魔な奴らは片付けたので貰ったアイテムを確認する。
【解析鑑定】は少し時間をとるから開示されているやつだけ見ておこう。
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アイテム名:
レア度:レジェンダリー
種別:回復薬
詳細:肉体の損傷及び精神力の完全回復。寿命以外の死因にて死亡した人間の魂を呼び寄せ、前述の効果を適用させる。
アイテム名:護法ノ霊薬
レア度:レジェンダリー
種別:強化アイテム
詳細:護法神を倒した者に授けられし霊薬。使用するとスキル:【
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これはこれは……またしてもレジェンダリーアイテムのオンパレードですわ。
上のアイテムは完全回復薬で蘇生もできると来たか。これを100個って、売ったらいくらの価値になるんだ? まぁ売らないけど。
下のアイテムは新しいスキルがもらえるのか……まぁ後で使おう。
取りあえず、都合の良いアイテムが手に入った。本来、ぴよこ辺りにでも手当を任せようと思っていたが、その手間が省けそうだ。
(さて、そろそろか)
「おい! もうとっくに起きてんだろ? 姿を現せ!!」
ずっと張り巡らせていた【気配感知】によって既に気絶から立ち直り、奴が動き始めていることを俺は知っていた。
「生きてやがったのか……オタク、いや……小川圭太ぁ!」
部屋の隅の影から現れたのはそう、
ボロボロの装備で足を引きずりながら現れた奴をもう俺は宿敵と言う目では見ていない。
俺はこいつを……今日、ここで潰してやるのだ。
『世界』を使って。
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