第26話

アイツの両親


「相変わらずのんびりしてるわね」


義両親に呼び出され、お米やミネラルウォータやトイレットペーパー等かさばる物の買い出しから帰って来るなり義母から盛大なお出迎えを受けた。

特売日ともあってお店は多くのお客さんで賑わい、レジも混雑していた。加えて重たい物を車へ乗せるのに一苦労しやっと義実家へ到着したのである。

お金は一応用意してくれている。しかしレシートとおつりをまじまじと見て私がおつりを誤魔化していないか、余計な物を買っていないか確認してくる。そんな事しないのに。


「全部運び終わったら、窓拭きと玄関の掃除、電球も切れたから替えておくんだよ。日が暮れる迄に済ませるんだよ。」

命令だけして居間にお茶を飲みに行く義母。義父も座椅子に座り込んで刑事物のテレビに夢中である。


適度に掃除を済ませ、終わったと伝えに行くと「お茶のおかわりぐらい、言われなくても準備するもんだろ。」と叱られる。まったくのろまなんだからとテレビ視聴に戻る義母。(んなもん、自分でやれ)と心で毒吐きながら、ハイハイとお茶を準備する。


「しかし、なんで自分だけ来たのかね。息子は一緒じゃないのか?会って色々食べさせてたかったのに。あんただけなんてつまらない。」

「かぁさん、仕方ない。休日も来られないなんて、息子も仕事が忙しいのだろう。そこまで頼りにされる自慢の息子って事だ。『跡取り息子』が立派で鼻が高いじゃないか。」

息子が不在でご機嫌斜めな義母。対して「『仕事』で来られない」事を本気にしている義父。


「まぁ、しかしなんだ。」

義父から声をかけられる。

「いくら仕事でも家族の予定もコントロール出来ないんじゃ、うちの嫁としてまだまだだな。『跡取りの孫』も産めなかったしなぁ。もっと頑張ってもらわんとなぁ。」


にやけが抑えられない顔でこちらを見る義父。同調すら義母。

苦笑いで怒りを隠す私。


はらわたが煮えくり返る。


結婚の挨拶時より『早急に跡取りを』と男児誕生を急かされてきた。「夫婦のタイミング」でとアイツが宥めても聞く耳を持たず。

私達夫婦は「性別なんて関係ない。無事に産まれてくれる事が何よりもありがたい。」と考えていた。

第一子妊娠中は、『男児ではない』と分かると興味を失い、早く次の子をとそればかり。

産後間もないうちから、次こそは男児を授かる様にと、色々口出しや手出しをされた。

『男児が授かる』と聞けば、彼方此方の神社のお守りを買ってくる。あれを食べろ、これは食べるなと管理される。

そんな義両親がトラウマになりつつあった時、第二子妊娠が発覚した。

しかし、再び『男児ではない』と分かるや否や医者の見立てが間違えではないかと騒ぐ。

女児が産まれるとなれば、私達に酷い言葉を浴びせてきた。

第一子妊娠中から都度アイツが注意しても無駄であった。

子ども達が成長し義両親に近づいて行っても邪険に扱われた。

アイツから「可愛い妻と我が子にそんな扱いをするのならば、自分諸共縁を切る」と言われショックを受けた義両親は、一応アイツの前では態度に出さない様にしていた。

私達も子ども達とは最小限の関係にする方針にした。



『跡取り息子』

義両親は、そうやって言ってるけれど。

義父は三男坊。ご実家は立派な農家で一番上の伯父様が跡取りとして、二番目の伯父様は補佐をされている。が、義父は家業を手伝わず。

義母も嫁入りの身。ご実家もごく一般的なご家庭。こちらも伯父様が跡取りとしていたはず。

義両親のご実家から継ぐモノは、さほどあれど、義両親自身から継ぐ財産はいかほどか。

それで『跡取り』と言われても何があるのか。

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