夏空の残響

技術的な完璧さゆえに描くものから感情が抜け落ち、スランプに陥った美術部の天才・芹沢旭（せりざわ あさひ）。
一方、天真爛漫な性格で、聴く者の心を揺さぶる音楽を奏でる軽音楽部の藤代湊（ふじしろ みなと）。

夏の終わり、町の祭りの共同制作でペアを組むことになった、水と油のような二人。旭は湊の無防備な情熱に苛立ち、湊は旭の冷たい完璧主義に反発する。しかし、湊が奏でる音楽に、旭は自分が失くしてしまった「心」の片鱗を見出す。

「お前の音を、俺に描かせろ」

次第に惹かれ合う二人だが、湊には誰にも言えない秘密があった。それは、彼の音楽の才能そのものを脅かす、残酷な秘密――。

視覚で世界を捉える画家と、聴覚で世界を感じる音楽家。互いの欠けた部分を埋め合うように、不器用な二人の心が共鳴していく、ひと夏の切ない青春ラブストーリー。