第12話:眠る少女と無敗の檻(おり)

第二層無限回廊は、終わりのない夢の中。

仲間とはぐれたレイは、深い眠りに落ちていた“アリア”の元にたどり着く。


白い花が咲く草原。

その中央で、彼女は泣いていた。


「アリア……」


目を閉じ、震えながら「ごめんなさい」を繰り返す姿に、レイの胸が痛んだ。


「俺が守れなかった……あの時、もっと強ければ……!」


──しかしその時。


「感動的だね、主人公さん。…でも、“彼女”にはまだ目覚めてもらわないよ」


声と共に現れたのは、全身に“金の鎖”を纏った少年。



◆新キャラ:御堂レン(みどう・れん)


・異能力:『絶対制圧(ジャッジメント・リンク)』

・対象の行動、思考、感情に「制限」を与え、命令を強制できる能力。

・どんな能力者でも“命令”に逆らえず、常に勝ち続けてきた。

・ただし発動には“精神力”と“記憶”を膨大に消費し、能力を使いすぎると…彼自身が壊れる。



「君の動き、止めさせてもらうよ」


レンの鎖が空間を縫うように飛び、レイの四肢に巻き付く。


「動くな」


──それだけで、レイの身体が硬直する。


(くそ……動けない!)


「君の記憶、全部読ませてもらったよ。ずいぶん“後悔”が多いんだね。

 なら、僕の“檻”で永遠に後悔してなよ」


鎖がさらに増え、草原を黄金の牢獄に変えていく。


「こいつ……反則だろ……!」


ユナも鎖に縛られ、動きを止められる。


しかし──


レンの額から、血が流れ始めた。


(……おかしい)


「この能力、“使えば使うほど”……俺の中の記憶が削れるんだ。

 だから、今の僕……名前すら、覚えてないんだよね」


血に染まった目で、レンは笑う。


「でも、勝てるんだよ。絶対にね」


その時だった。


アリアが、目を覚ました。


彼女の胸に灯った光が、草原を包む。


「……お願い、レイを“縛らないで”」


アリアの手が、レンの能力の鎖をほどく──まるで、それが“幻想だった”かのように。


「そんなバカな……!?」


アリアの力。それは“他人の幻影を見通す”――

幻術を解き、真実を暴く“夢見の巫女”の力だった。


レイが動けるようになった瞬間、拳がレンの胸に突き刺さる。


「──お前は、もう壊れかけてる。

 その力に頼る前に、もっと……誰かに頼れよ」


レンは崩れ落ち、気を失った。


残されたのは、アリアの微笑みと──


「……おかえり、レイ」


小さな声。けれど、レイの心には何より大きく響いた。



🔔次回予告


第13話「第三層・死の文化祭と君の笑顔」

かつての学園生活が悪夢として蘇る、次なる階層。

そこに待ち受けるのは“最悪の裏切り者”──そして、かつてレイが一度も勝てなかった男だった。

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