第2話
――それから数日。
俺の学園生活は、ツンデレ副会長・
「お昼? べ、別に一緒に食べたくなんかないけど、ひとりでご飯食べてるの、見てらんないからっ!」
「だから勝手に席に来るなって……」
毎日のお昼は、監視という名の同席。
しかも、なぜか箸が俺と同じ動きをしたり、食べるスピードが妙に合わせられたりしている。
(なんだこいつ、ツンデレってレベル超えてストーカー気質じゃねぇか……)
それでも、澪の人気は高かった。
学年トップの成績に加えて、生徒会副会長という肩書き。容姿端麗で運動もできる。
そんな彼女が、なぜか俺なんかに構い倒してくるもんだから、教室中がざわついていた。
――そして放課後。
俺が教室で荷物をまとめていると、背後から気配が。
「……桐谷。帰るの、遅いわね」
また来た。
しかも、わざわざ帰り支度した後、俺の様子を見に戻ってくるという執念。
「今日は生徒会とかないの?」
「あるけど。気になったから見に来ただけよ。別に、心配してるとかじゃないし!」
「……ふーん」
「な、なによ、その反応……」
澪はムスッとしながら、俺の横に立つ。
放課後の教室は窓から夕陽が差し込んでいて、静かで、少しだけ眩しかった。
「……ふつう、もっと感謝とか、しない?」
「え、何に?」
「わたしがわざわざ見に来てあげてることに、よ!」
「いや、感謝する要素ある……?」
「うぐっ……! そ、それならもういいわよっ!」
そう言ってくるりと背を向ける。
(……わかりやすいな、この人)
「……でもさ、なんでそこまで構ってくるの? 俺、別に問題起こしてないと思うけど」
「っ!」
その瞬間、澪の肩がピクリと動いた。
少しだけ沈黙。そして、ゆっくりと振り返る。
「……あんたさ、最初から、なんにも期待してない顔してるのよ」
「……え?」
「友達も、学校も、ぜんぶ、どうせ長続きしないって思ってる顔。そういうの、見てると……ムカつくのよ」
「……」
図星だった。
でも、そんなこと――他人に言われたのは、初めてだった。
「期待して、裏切られて、また転校して、また別れて。……だったら最初から期待なんてしない方が、マシなんだよ」
「――だからって、周りに壁作るのは違うわ」
いつもツンツンしてた彼女が、まっすぐに、真正面から俺を見つめていた。
その瞳は、夕陽に照らされて少し潤んで見えた。
「わたしは……少なくとも、そういう人間、嫌いじゃない」
「……え?」
「い、いや、ちがっ……! べ、別に、好きとか、そういう意味じゃなくて!!」
「はいはい、出た出た」
「なっ……! からかったでしょ!? このっ、鈍感男!!」
ツカツカと寄ってきて、俺の額をぺしっと小突く。
「ほら、もう帰るわよ。あんた一人にしとくとまた変なこと考えるんでしょ?」
「監視が徹底してるな……」
「うるさい!」
……なんでだろう。
こんなやり取りすら、少しだけ楽しいって、思っちゃったんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます