この青空に、君と生きる未来を誓う。
藤宮 彩恋
第1章 始まりの季節に
4月、はじまりの季節と言われる春。
これから何が始まるんだろう?
私にはどんなことが起こるんだろう?
そんな期待と不安が胸いっぱいに広がる、新学期初日の朝。
「いただきます!」
大きな声でそう言ってお母さんが作ってくれたご飯を食べ始める。
今朝は、ご飯・お味噌汁・玉子焼き・焼き魚の純和風メニューだ。
「
お母さんに早速そう言われて、一瞬気分が沈む。
「受験のことはあまり考えたくないけどね」
私がそう言うと、
「ついこの前高校に入学したばかりだと思ったら、もう3年生だもんな」
向かいの席に座っているお父さんがしみじみとつぶやいた。
「クラス替え、友達と同じクラスになれるといいな」
「うん。
お父さん、お母さんと話しながら食事をしていると、あっという間に時間が過ぎていく。
「おっ、もうこんな時間か」
時計を見て、お父さんが慌てて仕度を始めた。
「じゃ、行ってきます!」
元気よく家を出たお父さんを見送ったあと、少し遅れて私も仕度を済ませて学校へ向かった。
一歩外に出ると、春らしい甘い香りがする。
今日は朝からとてもいい天気で、雲ひとつないきれいな青空。
桜の花びらが暖かい春風に吹かれて舞っている。
水色の空に、桜の淡いピンク色が映えて、とても綺麗な風景。
こんなきれいな景色を見ると、日本に生まれて良かったなって心から思う。
穏やかな春の陽射しに照らされて、みんなの笑顔が輝いている。
学校に着いて昇降口に向かうと、すごい人だかりができていた。
みんなプリントを手にしながら、喜んだり残念がったりしている。
私もなんとか人だかりの中を通って、先生が配っているクラス分け表のプリントをもらった。
プリントを凝視して自分の名前を探したら、私は3年2組だった。
早速教室に行くと、すでにほとんどの人が来ていた。
みんなあちこちでそれぞれにお喋りしている。
「優羽ちゃん!」
とりあえず自分の席に着いて鞄を置いたとき、聞き覚えのある声で名前を呼ばれた。
顔を上げると、去年からの友達の陽依ちゃんが立っていた。
「あ、陽依ちゃん。今年も同じクラスだね。よろしくね」
「うん、よろしくね」
そう言って、陽依ちゃんが微笑んだ。
肩まであるキレイな黒髪に、二重の目で、身長150センチの小柄で可愛らしい女の子。
性格は、おとなしくておっとりしてて、気が利いて優しい。
なんとなく雰囲気が自分に似ていて、最初に話したときから気が合いそうって思っていた。
「わたしたちもついに最上級生なんだね」
「そうだね。なんかあっというまだよね」
「ついこの前入学したばかりのような気がするのにね」
「来年の3月には卒業だもんね」
「その前に受験だよ」
「優羽ちゃんは、大学どこ受けるか決めてる?」
「まだはっきりとは決めてないよ」
私と陽依ちゃんが話していると、
「はい、席に着きなさい」
担任の
生活指導担当で、かなり厳しいことで有名な先生だ。
先生の言葉に、席を立っていた子たちが慌てて自分の席に着いた。
「それじゃ、出欠確認します」
みんなが席に着いたことを確認すると、先生はひとりずつ名前を呼び始めた。
「
「…………」
それまで順調に進んでいたのに返事がなくて、先生が私の隣の席を見た。
私の隣の席は、このクラスで唯一まだ空席のまま。
「……休みかしら」
先生が呆れたように言った瞬間、少しざわついてる教室にドアの開く音が響いて、誰かが入ってきた。
艶のある綺麗な黒髪に耳にはピアスをしていて、制服を着崩して気怠そうな雰囲気を漂わせている男の子がなんのためらいもなく歩いてきて、私の隣の席に座った。
「日向くん、新学期早々遅刻なんてだらしないわよ」
先生がきつい口調で言うと、日向くんは聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で「すいません」とつぶやいた。
日向くんとは去年も同じクラスだったから、何回か隣の席になったこともある。
明らかな不良系ではないものの、なんとなく “近寄るなオーラ” が出ている気がして少し怖い雰囲気がするからか、いつもひとりでいる一匹狼的存在だ。
学校には来るけど、いつも遅刻だし、授業もほとんど出ない。
だからまともに話したことはないけれど、今年も同じクラスなんだ。
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