2 アイメイクミステイク
「もしもし、谷本です。サイモン大統領ですかな?」
ミコトは何が起きたか分からなかった。当然わたしは大統領ではないのでどうしたものかと思案しているうちに、また向こう側が話してきた。
「Hello, This is Tanimoto. Is this President Simon?」
今度は英語だ。流暢だったので、ミコトは外国の人に間違い電話をかけてしまったのかと思い、慌てた。
「す、すいません! 間違えました! あ、英語では……。ソーリー、アイメイクミステイク」
ミコトは最近通い出したタケシタ英語塾で身に着けた英語で間違いを詫びて、勢いよく受話器をもとの場所に戻した。
まさか間違い電話をかけてしまうとは。大野くんの電話番号はしっかり覚えていたはずなのに。
ミコトは自分のミスを反省した後、気を取り直してもう一度受話器を手に取った。先ほどよりも丁寧に、電話番号を打ち込んでいく。発信ボタンを押して今度こそ大野くんが出るのを待った。
プルルルル、プルルルル。「ガチャ」という音が聞こえ、ミコトは先ほどよりも大きな声で呼びかけた。
「もしもし」
数秒の沈黙が流れた後、ミコトが耳にした声はまたしても大野くんのものではなかった。そしてつい先ほど聞いた声であった。
「……もしもし、サイモン大統領ですかな?」
また間違えてしまったのか、とミコトは一瞬頭が真っ白になった。しかし、丁寧に電話番号を打ち込んだことを思い出した。今度は間違えていないという自信があった。ならば間違えているのは向こうということになる。
「わたしは大統領じゃないです!」
ミコトは半ば叫ぶようにして言った。すると向こう側で、
「ああ? じゃあ誰なんだねさっきから! こっちは大事な電話会談の準備をしているというのに。いたずら電話か? そうなんだろう。どうやってこの電話番号を入手した? 言いなさい! 法的措置を取るぞ!」
と相手が何やらわめきだした。ミコトには何が何やらわからなかった。
「わたしは大橋中学二年の
ミコトは強気で言葉を並べた。すると向こう側も、こちらに負けじとわめいた。これでは会話にならないので電話を切ろう、と思った直後、電話口から今話している相手とは別の人物の声が聞こえてきた。
「待ってください、谷本首相。恐らくこれは間違い電話ではないです。今私の携帯で部下に電話を掛けたのですが、全く知らない相手と繋がりました。連絡先から電話を掛けたので間違いはあり得ません。恐らく何らかの通信障害が起きています」
低くて良く通る、男性の声だ。先ほどの英語を話した声と同じだった。
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