転生した勇者らしいが記憶がない
ヤメタランス
第1章 普段よりハッピーかもしれない朝
――― ナンバー エイト ・・・
――― 起きろ ・・・
声が聞こえる。
――― 目覚めるのだ ・・・
――― ナンバーエイト ・・・
やめろ! 番号で呼ぶな。 俺は独立した人間だ!
いや、そうじゃない・・・ これは、俺の・・・
「うわ――――!」
自分の叫び声で目が覚めるのは、これで何回目だろう。
そうだ、難波 英人。俺の名前だ。
いや、生前の俺の名前だったものだ。
「そういえば、悪夢で飛び起きるのはしょっちゅうだが、起きた後で内容をおぼろげでも覚えていたのは初めてだな」
目の前のテーブルの水差しから、ぬるくなった水を汲んでぐいっとあおる。一息ついて心臓も頭も落ち着くと、いつもの悪夢について考える余裕もできたのだった。
まったく。俺の主観でも数年たっているというのに、今更一部だけとはいえ昔のことを思い出すとは。
いやいや、それでも大きな進歩かも知れない。チート能力を持った転生勇者がごろごろいるこの世界で、前世もあの世でのことも何も覚えていない俺は、全てを素のフィジカルだけで生き抜いてきたのだから。
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