中村橋大福帳

猫町大五

第1話

 朝が来た。

 見慣れた、というよりは見飽きた六畳間から、男の一日は始まる。

 身を起こし、身支度を整え、朝食は摂らない。おもむろに手元のボストン・バッグを開くと、中からごろりとした鉄塊を取り出した。

 端的に言えば、拳銃である。

 蓮根状の六連弾倉に細身の銃身がつき、その下にはまた棒がつき、下に折れ曲がるようになっている。

 とうの昔に売らなくなった数世代前の代物で、今や誰も持ち得ない舶来品を、この男は実用の為、後生大事に持っているのである。

 各部を改め、再び戻すと、男は六畳間をあとにした。

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中村橋大福帳 猫町大五 @zack0913

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