「名」のない世界
これは、世界に「意味」や「名」が存在しなかった時代。そこはただ「形」だけがある世界。山は「山」ではなく、海も「海」ではない。炎も風もただそこに在るモノだった。そこに在るモノたちは互いに感じ、流れの中で変化していった。誰も「
」と呼ぶことを知らずに、穏やかに流れていた。
あるとき、モノに「名」を付けようとした彼があらわれた。
「これは「石」これは「木」これは「炎」」
その彼は、そこに在るモノに「名」を付ける楽しみを覚えた。彼の発明した「名」は名を知っている者同士において、モノがなくてもソレを示す「名」を発すれば相手へ簡単に伝えることができる便利さを持っており、その便利さと名を発する楽しさも相まって次第に広く使われるようになっていった。
彼は、彼が思うすべてのモノに名をつけ、生涯を終えた。自分を示す「名」がまだないという悔いを残して。
後のモノ共は、「名」を伝えることのできる「音」を神が授けた奇跡と考え、神を敬い祈る祭りに起用するようになる。
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