親子

馬に乗りながら二人は沈黙していた。

口を最初に開いたのは鼎だった。


「あの…雷児(らいじ)…。」


「母上、曹法(そうほう)と呼んで下さい。」

「都で雷児(らいじ)という名前を知っているのは私を拾った義父上だけです。」


「そっか…お礼を言わないとね…その人に。」


「残念だが義父上は身まかられた、もう遅い。」


「ご病気で?」


「どういうわけか呉(ご)から届いた塩漬けの生首(なまくび)に冗談を言った途端寝込まれてしまってそれっきりだ。」


「うわぁ…生首に冗談とか普通言う?」

「それから、雷児(らいじ)は…。」


「曹法(そうほう)だ、母上。」


「普通に私と話をしているけどもっと驚いたりとかしないの?」


「私の母上は人間ではないと最初から思っていたためあまり抵抗は無い。」


「そ…そう…。」


しばしの間、鼎は切り出した。


「帰らない? 天上界に。」


「私は許昌に残る。仕事が山ほどあるしどこにも行かない。」


「無理が来る、天上界の人間はどこかで必ず年を取らなくなる。」

「長く残れば必ず良くないことが起こる。」


「では、その時まで…。」


鼎は予備のモノリスを曹法(そうほう)の懐に忍ばせた。


「それを使って天上界に帰って来る事を待っている、雷児(らいじ)、いや、曹法(そうほう)。」


鼎は彼をそのまま残して天上へと帰った。

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