息抜きギャグ回)姉神は見た、燃ゆる惚気と暴走神話

──ツッコミは凛として、愛は火山のごとく、父は山以上に重い。



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登場人物と神格補足


イワナガヒメ(国津神):理知的で凛とした姉神。妹と妹婿の惚気地獄に巻き込まれ、冷静かつ的確なツッコミで神話の歪みを修正しようとする。


コノハナサクヤヒメ(国津神):花のように可憐で、火山のように一途。天然に見えて中身は“愛に狂う”ヤンデレ神。燃える愛、物理的に。


ニニギノミコト(天津神):天から来た誠実な神。普段は控えめだが、なぜか大事な場面だけ“天津神スイッチ”が入って超突発的に動く。


オオヤマツミ(国津神):山の神にして、姉妹の父。国津神としての懐の深さと、“娘命”な姿勢を併せ持つが、天津神(=婿)に対しては山の如く手厳しい。




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【序章】久々の再会、高千穂にて


サクヤ:「お姉ちゃ〜ん♡ ねぇ見て見て! うちの子たち、三柱とも超かわいいの〜♡ ニニギ様にそっくり♡」


ニニギ(照れ笑い):「まあ……血は争えないっていうか」


イワナガ(優雅に微笑んで):「ふふ。それは喜ばしいことですわ……ただひとつ、確認してもよろしいかしら?」


サクヤ:「うん? どうぞどうぞ〜」


イワナガ(キリッとした目つきで):

「サクヤ。天孫降臨の直後に懐妊が判明した件について、時系列の説明をお願いできるかしら」


ニニギ(冷や汗):「たしかに……早かったよね、ちょっと……いや、すごく……」


サクヤ:「だってニニギ様、“これ本当に俺の子か?”って聞いてきたんだもん♡」


サクヤ:「だから、“だったら火の中で産んで証明するわ”って、小屋に火を放って出産したの〜♡」(ハイライトオフ)


イワナガ(扇子をピシッと閉じて):

「……サクヤ、それは誤解を解く行為ではなく、神話生成行為ですわ」


ニニギ(苦笑):「でも……あの時の覚悟に圧倒されたというか……うん、本気だって思ったんだよ」


イワナガ:「それ以前に、なぜ“日頃は優柔不断な天津神”が、その時だけ“真顔覚醒モード”になるのですか?」


サクヤ:「でもでも♡ ニニギ様、“火の中で命を産む君が一番美しかった”って言ってくれたの♡」


イワナガ(目を細めて):

「……出産中に愛のポエムを捧げるのは常識の範疇を超えています」



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【中章】東海ヤンデレ横断 ~愛しきあなたをGPSで追って~


ニニギ:「……いや、本当に驚いたよ。出張先の斎宮で朝起きたら、サクヤが部屋の前にいたんだ」


サクヤ:「うふふ♡ “仕事で数日帰れない”って言ったのに、女官と笑ってるの見ちゃったんだもん♡」(ハイライトオフ)


イワナガ(冷静に):

「……サクヤ。妊娠八ヶ月で、富士から三重まで徒歩移動? しかも夜通し?」(しかも三つ子)


サクヤ:「うん♡ 赤ちゃんたちにも“会いに行くよ〜”って言いながら♡」


イワナガ:「……母子揃って愛に突進とは、さすがですわ」


ニニギ:「道で誰にも見つからずに……って、風向き読んで来たんだっけ?」


サクヤ:「そう♡ ニニギ様が山の気をちょっと変えたから、風の流れで位置がわかったの〜♡」


イワナガ:「その推理、もはや野生です」


ニニギ:「“浮気してたらどうするつもりだったの?”って聞いたら──」


サクヤ:「“その場で一緒に燃え尽きるつもりだった”って答えたの♡」(ハイライトオフ)


イワナガ(静かに):

「……もはや、“火山信仰の暴走”ですね。天変地異一歩手前」


ニニギ:「その時の迫力に圧倒されて……即プロポーズしたんだ」


イワナガ:「貴方の“危機的状況時だけ男らしくなるスイッチ”、制御できませんの?」



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【回想】オオヤマツミと婿審査(天津神 vs 国津神)


オオヤマツミ:「……で、天津神。お主、うちの娘に何を見た」


ニニギ:「何もかも、です。笑顔も、怒った顔も、全部まるごと惚れました」


オオヤマツミ:「……火に包まれててもか?」


ニニギ:「はい。むしろその時が一番、決心がつきました」


オオヤマツミ(ズンッ):「なるほど。“炎の中でも愛せる”か。合格だ。ただし──」


ニニギ(ビクッ)


オオヤマツミ:「娘を泣かせたら、山一つ潰す。姉まで泣かせたら、二山な」


ニニギ:「誠心誠意、努めます!」


サクヤ:「お父様〜♡ そんなに睨まなくても〜♡ ニニギ様、ちゃんと反省してくれてるし♡」


オオヤマツミ:「娘にだけは甘い。それが父親だ」


イワナガ(ふと呟く):「……だから、私の縁談は全部吹き飛ぶんですね」


オオヤマツミ(真顔):「どの男神にやるにも、お前たちは惜しいのだ」



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【終章】惚気と祈りと神務の日々


サクヤ:「ねぇニニギ様♡ 明日もお弁当作る〜! 愛情たっぷりで♡ 火の加減は……焦げるかも♡」


ニニギ:「そ、それはそれで……愛の味ってことで」


イワナガ:「焦げすぎは消化に悪いです。副菜は私が引き受けます」


サクヤ:「でもニニギ様、“美味しいよ”って言ってくれるから嬉しくて〜♡」


イワナガ(そっと天を仰いで):「……天津と国津、時に火山、時に山。惚気の中でも、祈りは続くのですね」



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イワナガの結び:


> 炎の中でも愛は燃え、山のような父は今日も重い。

天津と国津のはざまで、妹は笑い、私はツッコむ。


──これもまた、“祈りを繋ぐ”務め、なのでしょう。


おわれ


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