目標ロンディニウム

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 ──目標ロンディニウム



 東部の港湾都市に上陸したオストライヒ帝国地上軍。


 じわじわと橋頭保を拡大しながら前進した彼らはついにアルビオン連合王国政府軍が立て籠もるロンディニウムに向けて前進を開始。


「全軍前進、全軍前進」


 先頭を進むのは第1皇帝親衛装甲師団で、その装甲捜索部隊が装備するアーミン装甲偵察車両とルクス軽戦車が最前列を進む。その上空をRH-333汎用ヘリを偵察仕様にしたものが飛行した。


 このアーミン装甲偵察車両は65口径20ミリ機関砲1門を備えた装輪装甲車で、旧式のカメール装甲偵察車両の後継として導入された。


 ルクス軽戦車は48口径75ミリ戦車砲を主砲とするもので、これもまた旧式化していたピューマ軽戦車の後継として導入されたものだ。


 このような軽装甲車両で編制された装甲捜索部隊が安全に進軍できる経路を探していゆく。上空のRH-333汎用ヘリは上空から待ち伏せなどに警戒する役割がある。


 最初に彼らが敵に遭遇したのは、ロンディニウムに向かう途上にある小都市でだ。


 重機関銃の重々しい銃声が響き、射撃を浴びたアーミン装甲偵察車両が停止して、すぐに後退を始める。それから随伴していた歩兵が遮蔽物を利用しながら前に出た。


「前方に重機関銃陣地だ。反政府勢力のものと思われる」


「間違いないのか?」


「あの赤旗を見ろ。間違いない」


 歩兵たちの視線の先には重機関銃陣地があり、その陣地が立て籠もる建物には赤旗が掲げられていた。間違いなく反政府勢力だ。


「ルクス軽戦車を前に出せ。吹っ飛ばすぞ」


 装甲捜索部隊が保有している最大の火力であるルクス軽戦車がここで前に。


 遠方から主砲の狙いを定め、砲撃を実行。機関銃陣地が吹き飛ぶ。


「前進!」


 そして、装甲捜索部隊は前進を開始したが──。


「敵戦車、敵戦車! クソ、バックしろ!」


 市街地を赤旗を掲げた戦車が移動しているのを察知した。反政府勢力の歩兵たちをタンクでサントさせたかつてのアルビオン連合王国陸軍の戦車が、砲塔をゆっくりと旋回させてアーミン装甲偵察車両を狙う。


 アーミン装甲偵察車両は全力でバックし、敵戦車が20ポンド砲を発砲。砲弾が飛翔し、アーミン装甲偵察車両は回避するも、民家に命中した砲弾が民家を吹き飛ばす。


「市内に複数の敵戦車を確認。主力を押し上げてくれ。こちらでは対処できない」


 装甲捜索部隊からそう報告が入り、第1皇帝親衛装甲師団は主力である戦車部隊を市内に向けて送り込む。もちろん装甲擲弾兵による掩護付きだ。


 反政府勢力に奪取された複数の主力戦車が市内に陣取るのを排除すべく、戦車部隊は前進していった。


 車長はキューポラから身を乗り出し、索敵と行う。ちょっとした情報でもすぐにつかまなければ、見通しの悪い市街地では命取りになる。


 もちろん斥候として装甲擲弾兵が先行し、情報を集めているが自分たちの命を完全に人任せにはできないものだ。


「敵戦車を確認した。この先にある広場に陣取っている」


「この広場か。いきなり飛び込むのは危険そうだ」


 広場はそれなりに広く、通りから出てくる車両を待ち伏せできる位置に敵戦車は陣取っている。何の策もなしに広場に突っ込めば、あえなく待ち伏せによって撃破されてしまうだろう。


「迫撃砲が支援可能だ」


「よし。では、迫撃砲が砲撃後に突っ込もう」


 ここで装甲擲弾兵が装備している光景81ミリ迫撃砲が持ち出され、広場に陣取っている敵戦車に狙いを定める。


 いくら戦車の上部装甲が装甲の薄い場所だとしても、このサイズの迫撃砲では影響はない。しかし、敵の索敵能力は一時的に奪われるし、混乱も生じるだろう。そのことはヒスパニア内戦で得た経験のひとつだ。


 それから迫撃砲が建物を遮蔽物に敵戦車を砲撃。


 砲弾が降り注ぎ、敵戦車の視界が奪われ、随伴している歩兵も蛸壺に押し込まれる。


「戦車前進、戦車前進!」


 そこにオストライヒ帝国皇帝親衛軍の戦車が突っ込む。レオパルト主力戦車は素早く主砲の狙いを混乱する敵戦車に定め、一斉に砲撃。


 敵戦車の砲塔正面装甲は一部弾かれたが、車体正面装甲や側面装甲は見事に貫通し、弾薬が暴発して敵戦車の砲塔から炎が噴き出し炎上する。


「撃て、撃て!」


 それから激しい戦車同士の砲撃戦が行われ、広場は戦場と化す。


 しかし、最終的に練度と装備の両方で上回っていたオストライヒ側が勝利し、広場は制圧された。それから装甲擲弾兵によって市街地の制圧が進み、反政府勢力は徹底を開始したのだった。


「前進再開!」


 オストライヒ地上軍は前進を続け、ロンディニウムを目指す。


「ヴィート上級大将閣下。我々は3日後には恐らくロンディニウムに到達します」


「よろしい。しかし、敵の抵抗はあるだろう。それもロンディニウムに向かうにつれて激しくなるはずだ。空母艦載機による航空阻止は続けろ」


「了解」


 現在、アルビオン東部の北海海上にはミサイル戦艦フリードリヒ・デア・グロッセを旗艦としたオストライヒ帝国海軍大洋艦隊が展開している。


 そこには正規空母であるジークフリートとベイオウルフが展開し、アルビオンの反政府勢力に対する航空阻止を行っていた。それはロンディニウム救援に向かうオストライヒ地上軍を妨害しようと機動している反政府勢力への爆撃だ。


 問題はこの海軍による支援がどこまで続くかである。


 アルビオンの海軍は水兵の反乱などで今は動けていない。今、海兵隊が水兵の反乱を鎮圧しつつあるが、それでも動けるようになるにはもうしばらくかかるだろう。


 だが、もし反政府勢力がアルビオンの軍艦を完全に乗っ取り、オストライヒ海軍に攻撃を仕掛けてきた場合、海軍はそちらの迎撃に回らなくてはならなくなり、航空支援は途絶えることになる。


 また潜在的な敵はアルビオンの反政府勢力だけではない。ガリア・コミューンもそうだ。ガリア・コミューンも大きな海軍を保有しており、それらは地中海と大西洋の両方に展開している。


 その海軍がオストライヒ海軍に向かってきても、やはり航空支援は途絶える。


 事実、既にガリア・コミューンの所属と思われる潜水艦をオストライヒ海軍の哨戒機や駆逐艦が捉えており、北海には緊張が漂っていた。


 海軍による航空支援が途絶えるのは、同時にアルビオンに展開中のオストライヒ地上軍の上空の航空優勢が消失することを意味する。


 アルビオンの反政府勢力は今のところ空軍は一切手に入れていないが、ガリア・コミューンが義勇軍として空軍を派遣しようとしているという情報は入っていた。オストライヒ地上軍はその点でぴりぴりしている。


「1日でも早くロンディニウムへ!」


 オストライヒ地上軍はそれを合言葉に前進する。


 ロンディニウムを制圧すれば、ロンディニウムにある空港施設などを使って空軍が展開できる。そうなれば上記のような不安定な戦況は覆され、内戦の勝利に向けてまた前進できるのだ。


 主力戦車が前進し、装甲兵員輸送車が前進し、オストライヒ地上軍はロンディニウムを目指し続けた。


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