第二十一話『祝宴の裏で消える民、修正者《コレクター》の新思索と少年の願い』
「おお、メルディさま、わざわざ我が領地においでくださいまして、ありがとうございます」
そう微笑んだ細身のルビアン卿がメルディに挨拶をした。
「そちらのかたはお付きではないのですか?」
ルビアン卿の側近、レセーラという紳士風の男がそうきいた。
「ええ、こちらは冒険者のカレンとトール、そして聖女見習いのディルさまです」
「ほう、カレンどののお噂は聞き及んでおります。 それに聖女見習いとは、これは光栄なこと」
「かまわぬ。 ごちそうを用意いたせ」
「はい、それはもう」
「なにいってるのディルさま!」
「かまいませぬ。 このようなことこんな田舎の貴族ににはなかなかありえない幸運ですので、ぜひ長らく滞在をお願い致します」
予想外にルビアン卿は喜んでいるようだった。
「特に警戒してるようではないですね」
「もぐっ、そうだな。 うむうまいっ!」
「はむっ、そうね。 この鳥ジューシー」
「むぐっ、ええ、そうですの。 これもおいしいですの!」
ぼくの話をききながら、だされた食事をもりもり三人は食べている。
(はぁ、ノーキン三姉妹)
「はぁ、満足...... ここは飯もうまいから怪しくないんではないか?」
「どんな理由ですか! 早速調べますよ」
「うぷっ、ごめん食べすぎで動けない......」
「そうですの。 すこし休憩が必要ですの」
「ばかすか食べるからですよ! さすがに侍女たちが引いてましたよ!」
ノーキンたちをおいてぼくは外にでた。
(あの三人にあわせていたら調べられない」
町にでると、どうにも空気が重い。 よそ者だからか、町の人にじろじろとみられている。
「なんか重苦しいな」
(メルディ姫の話だと、鉱山でもうけてるはずだ。 いや薬か。 確かに城ででた食事は豪華だった。 でも町の人々はとても豊かそうにはみえない。 カイルが悪徳領主といってたな)
「でも薬をつくっているなら、こんな町中ではないだろうな」
(町の外にいきたいが、三人と離れるのは危険だ。 まずは
「
周囲の地面や空気、魔力がステータスとしてみえる。
「もっと、対応できることを増やしておく。 あと魔法、ぼくはメルディ姫のように決まった魔法がある訳じゃない。 まだ他の方法はあるはずだ。 魔法...... 願いの魔力を具現化。 あの薬は......」
ドンっとぶつかられた。
「あっ、ごめんなさい」
「気を付けろよな」
それは少年のようだった。 その子は路地へと入っていく。
「あっ!」
財布がない。 ぼくはすぐに追いかけた。
路地奥に少年がいたが、ぼくをみて走った。
「くっ、はやい! どうするもうきらめるか! いや子供のうちに成功体験を与えるのはまずい! よし
周囲の空気抵抗を筋力へと移動、速くはしる。
「なっ!」
逃げようとする少年を捕まえた。
「だめだよ。 こんなことしたら」
「......うるせえ」
「親は?」
「いない。 どっかにいった」
「どっかに......」
(嘘か本当かわからないが、身なりから孤児なのかもしれない)
その時少年のお腹がなる。
「あっ、そうだ。 確か、食事のときディルさまがぼくのものを奪い取るから隠したものが」
布に包んだパンがあった。
「これ、どうぞ」
「礼はいわねぇぞ」
「別に、聖人ってわけじゃないけど、聖女のお付きなんでね」
「聖女......」
「ああ、ディルディナ教の聖女見習いのお付きをしているんだ」
「聞いたことがある人を救ってくれる神様だ!」
(うーん、救うかな。 完全にごはん食べて眠ってるしな)
「その人に頼んでくれよ! 母さんと父さんを戻してくれって!」
「母さんと父さん...... まあ、先にパンを食べて」
その少年はサグといい、このとなり村の出身だった。
「それでサグ、母さんとお父さんがいなくなったのは?」
「半年前、モンスターが現れて畑がだめになっとき、領主さまから仕事の募集があったんだ。 それで二人は働きにでた。 村の人たちも大勢...... でも待っても帰ってこない。 それでここにきた。 でも領主さまにはあわせてもらえない」
そう顔を伏せた。
(村の人たち、なにかあるな......)
「それでなにかおかしなことがこの近くで起きなかった?」
「おかしなこと? そのモンスターだけ...... ほとんどここにはモンスターなんてでなかったのに急に現れたんだ」
「それはみたの?」
「ううん...... 畑がめちゃくちゃになってたから、みんながモンスターだって......」
「そうか」
「なあ、兄ちゃん! 聖女さまにお願いしてくれよ!」
「わかった。 伝えるよ」
「本当! これ...... ごめんおなかがすいて」
「村には誰かいるの」
「働き手が大勢いなくなって、みんな困っている」
「そうか、ちょっときて」
ぼく町で食べ物を買えるだけかい。 となり村に届けた。
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