第二十話『王都を蝕む白い粉──商人ギルドと薬物の影』
「......なるほど、アスワルドに関与していたことをしってる...... か」
カイルの隠れ家につれてこられた。
「カイルも知ってたんですか?」
「まあな。 俺たちは各国の地下組織とつながっているからな。 やつらの話も伝わってくる。 ただここからはビジネスだ」
カレンは金のはいった袋をテーブルにおいた。
周囲から口笛をふく音がする。
「なるほど、金はあるか...... それでお前はなんでつかんでいる?」
ディルさまが袋を抱いてはなさない。
「なぜだ! こんな奴らしばいて吐かせればよかろう!」
「くくっ、あんたらの強さはしってる。 ことはそう簡単じゃないと思うぜ」
そういうとカイルは上着を脱ぐ、中にはびっしりと結晶のようなものがある。
(魔力の結晶、どうやら本物のようだ)
「何かすれば吹き飛ぶぞ」
「別になにもしないわ。 ディルちゃんわたして」
ディルさまが不満顔で袋から手をはなす。
「だが、金はいい。 ひとつ頼みがある」
「やった!」
ディルさまが袋を抱きしめた。
「まさか、薬だとはね......」
そうカレンがつぶやいた。 ぼくたちはカイルの依頼で町を歩いていた。
「うむ、市中に出回り始めた怪しい薬【エゴイズム】の出所を調べるのが頼みだといっていたな。 確か魔力がこもる薬だといっていたな」
「......薬、まさかとは思うけど、アスワルドの貴族が使っていたのはそれなのかな」
「わからないけど、取りあえず市中に出回ってるものは安価に買える粗悪品で、貴族に出回ってるものは高価なもののようね。 王さまにきいてみましょう」
ぼくたちは城へと赴いた。
「薬...... エゴイズム。 そのようなものが...... リヴァルド」
王さまが眉をひそめる。
「ええ、貴族の間でそのようなものが出回っているという噂はきいておりました。 しかし体が変異するなどとはきいておりません......」
「だがよくはわからぬものだな。 すぐに禁止しよう」
王さまはそう約束してくれた。
「これですこしは抑制できるか......」
向こうの柱の影からメルディ姫が手招きをしている。
「どうしたのですか?」
「しー! 私が部屋からでてるのは内緒ですの」
どうやらかってに城を抜け出した罰として部屋で謹慎させられてるらしい。
「つれていきませんよ」
「わかってるですの。 それより薬の話をしてましたですの」
「ああ、しってるの?」
「これ......」
そういって姫はポケットから包み紙を差し出した。 そのなかには白い粉がある。
「これって......」
「貴族がなにやら怪しげな薬を使っているときいて手に入れたのですの」
「ふむ、確かにいやな魔力を感じるの」
「やはり、これはエゴイズム。 これの出どころは?」
「下級貴族のルビアン卿ですの。 彼が貴族に流しているとのこと」
「ルビアン卿...... わかったこれを借りるよ」
「ええ」
ぼくたちは城をでると、カイルに話をしに行った。
「ルビアン卿か......」
「知ってるの?」
「ああ、いわゆる悪徳領主だ。 もともと貧乏貴族だが領地で鉱物がでたということで、最近金回りがよくなって中央に呼ばれるようになった」
「それってこの薬のせい?」
「多分な...... こいつはかなり高額で、貴族たちが好んで使っている。 その粗悪品が市中に出回っているんだろう」
「そいつをふんじばればいいのね!」
「そうだ! さっさとやってしまおう!」
「......証拠もなしにか」
カイルはさすがにディルさまとカレンにひいている。
(ノーキン炸裂!!)
「......さすがに王族に知り合いがいても、重罪に問われるぞ。 今や王族は商人ギルドと貴族たちに押されているからな。 このままだと権力を奪われるのも時間の問題だ」
「証拠が必要なのか」
「ああ、こんなものすぐにつくれるわけがない。 なにか施設のようなものがあるはずだ。 それを押さえられれば......」
「それなら、ルビアン卿の領地を調べる必要があるな」
ディルさまがいう。 そしてぼくたちはルビアン領に向かった。
「ここか」
ぼくたちはルビアン領についた。
「ふぅ、大変だったのですの。 父上を説得して許可をえるのは」
ルビアン領へ入るのは難しく、メルディ姫の外遊ということで許可をえた。
「ええ、ありがとうございます」
「それにしても検問が厳しかったな」
「ディルさまが兵士ともめるからですよ。 完全に目をつけられました」
「やつがわらわから菓子をとりあえげようとするからだ!」
「まあ、それがなくても厳しかったわ。 やはりなにかを隠してるのね」
カレンがそういった。 ぼくたちは武器を全て押収されていた。
「まあ、外遊で武器を携帯するのは礼儀上問題ですの」
「さあ、いきましょう」
ぼくたちはまずルビアン卿へと会いにむかう。
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