第2話 異世界転移?
僕の名前は
亡くなったじいちゃんの道場でトレーニングをしていると、幼馴染が入ってきた。
「学校疲れたー」
「お疲れ」
この幼馴染の名前は
ちなみに高校が別なのは知能にだいぶ差があるからだ。
「腕立てするかー」
彼女はそう言って僕の隣で腕立て伏せを始めた。僕らはこうして放課後によく鍛錬をしている。じいちゃんに鍛錬を欠かすなと言われているからだ。
僕もランニングを再開する。ちなみに道場には専用のランニングマシーンがある。
「そういえばウチの学校の奴道場に来なかった?」
「あー来たよ」
ちょうど彼女が来る2、30分前にガラの悪い連中が道場に来ていた。うちの学校にはいないタイプだ。
「アイツら私が数日前にシメたばかりだったからさー、きっと根に持ってんだよね」
「あんま暴力的なのは歓迎しないな」
「いや、アイツらから仕掛けてきたんだって!しかもめっちゃ弱かったし」
ウチの道場、というかじいちゃんの教えには「売られた喧嘩はすべて勝て」というものがある。だからまあ向こうから仕掛けてきたなら仕方ない。
「なんかこっちにも喧嘩売ってきたから、とりあえず
「サンキュ!ごめんね、迷惑かけて」
「別にいいよ」
そう。そいつらは蛍にやられてイライラしていたのか、道場の備品を壊そうとしてきたのだ。
それに僕のことを「さえない陰キャ」とかいって煽ってきたから返り討ちにした。確かにそう見えるのかもしれないけど……。
僕がそれを言うと彼女はにやっとした。
「見た目で判断しちゃったかぁ」
「それ僕の見た目をさえないと認めてないか?」
「確かに!」
「確かにじゃねえよ」
まったくこの幼馴染は。まあノリのいいやつなのでそこまで気にしてないが。けどちょっと
「ごめんって。今日の料理当番代わるからさ~」
「蛍のは料理ってより錬金術だろ」
「はー?」
事実である。彼女の作る料理はことごとくゲテモノなのだ。唯一まともに作れるのはカレーだけである。
「喧嘩か~?」
「謝るから腕を握るのやめて!」
蛍が頬を膨らませて僕の腕を握る。傍から見ればスキンシップが可愛い幼馴染なのだが、コイツ握力100㎏近くあるんだよな。腕折れるわ。
「化物だからなぁ」
「樹だって100メートル走10秒台じゃん」
「アスリートと呼んでくれ」
「帰宅部がなんか言ってるよー」
ああ言えばこう言うとはまさにこのことである。
幼馴染の頬をつねっていると、突然目の前に女性が出現した。
「青春してるね~」
どことなく女神っぽい格好をしている。誰この人。
「ここ私有地ですよ」
「いや反応うっす!!もっと驚いてもいいのでは!?」
「あーはいはい驚いた驚いた」
「態度が悪い!?」
私有地だから。早く立ち去ってくんないかな。
「君たち、異世界に興味はないかい?」
女神らしき人物はそう言ってウィンクしてきた。異世界?
その言葉に少し興味が惹かれたので彼女の方を見る。
「異世界って、あの異世界ですか?」
「そう、あの異世界!よく漫画やアニメの登場人物が転生する異世界!剣と魔法のファンタジー!なろう発祥の
「まあ、あるといえばありますけど」
異世界か。確かに興味はある。
「もし君たちが良ければ、異世界に転移してもらいたいんだ」
「転移ってそのまま向こうに行く感じですか?」
「あーそうそう」
どことなく胡散臭い表情で頷く女神。
見た感じすごく怪しいが、異世界に興味があるかと言われれば……すごくある。
うちのじいちゃんも異世界があるなら行ってみたいとよく言っていた。
「その異世界には強者はいるんですか」
「その異世界に強い奴はいる?」
僕と蛍は同時に聞いていた。そう、気になるのはその一点だけだ。
強者を求めて戦うことこそウチの道場の教え。強い奴がいるならどこへだろうと行くまでだ。格闘家の誇りってやつだ。
女神は苦笑いした後頷く。
「まあ、いるよ。魔王とか古竜とか。どれもこっちの世界ではまず経験できない指折りの強者だろうねー」
「じゃあ行きます」
「じゃあ行く」
「即答……まあともかく、決まりだねー。早速行こう!」
女神はもうその気満々だった。だが、その前にちょっとやっておくことがある。
「行く前に祖父の墓前にお祈りしてもいいですか」
「あ、いいよー」
「ありがとうございます」
僕らは道場の奥にあるじいちゃんの仏壇に向かうと、祈りをささげた。
――じいちゃん、あなたがしきりに行きたいと言っていた異世界に行ってくるよ。後強い奴もいるんだって。ボコしてくるよ。
蛍のやつも何事か祈っている。そしてしばらくたった後、道場と家の戸締りや処理を済ませた僕らの前に女神が再び現れていた。
「じゃあ、行こうか」
「はい」
「うん」
女神は指をパチンと鳴らす。すると僕らが立っていた景色が移り変わり始める。様々な景色が絵の具のように混じり合い、徐々に形を成していく。
「向こうに完全に到着するまで少し時間があるから、説明するね~」
そういって彼女は説明を始めた。どれも異世界ファンタジーにはあるあるの設定だったので割愛するが、まとめると魔王復活の危機にさらされているらしい。
「その魔王ってのは相当強いんですよね?」
「まあねー。普通にやったら、今の君達でも勝てないんじゃない?」
「まじか」
いままでは負けたことがほとんどなかったので楽しみだ。
ところで異世界に行くからには、僕らも魔法が使えたりするのかな?
「あー君たち?完全な
「「え?」」
「まあ安心してよ。その代わり筋力ステータスにはボーナスつけておくから」
なんてことだ。魔法はちょっと楽しみだったのに。というかステータス?
「ああ、向こうの世界には『ステータスウィンドウ』ってのがあるからね。自分の強さとかが一目でわかるんだ」
ゲームみたいだな。自分がどれくらい強いのか確認できるのはいいことだ。
「おっと、そろそろ着くよー」
女神が気の抜けた声を発すると同時に景色が変わる。
いかにも異世界といった景色だ。
「あ、やべ」
女神が何だか焦った声を出している。
「向こうについたらいきなり戦闘になるかも」
「「え?」」
僕らが声を発する間もなく、気が付くと目の前にはモンスターの大軍がいた。
「あ~やらかしたわ。とりあえずこいつら全部
おい、それでいいのか女神よ。
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