手紙

はる

あなたへ

拝啓 

わたしはいま、初めて誰かにお手紙を書いています。投函するつもりはないし、出したところで届いてくれる確証はないけれど、あなたにお手紙を書いてみます。


いざ書き始めてみるとなにから伝えればいいか迷っちゃうね。毎日のようにお話をしていたときは何を話そうか、なんて難しいことは考えずにいたし、もしまた会えたらこれを言いたいな、とか考えたり、前みたいに、あなたが好きなものを見つけたらつい嬉しくなっちゃうのは変わらないよ、とか、話したいことがいっぱいありすぎて困っています。

あなたのことを忘れた日はありません。

もう傍にあなたはいないけれど、ずっと傍にあなたがいることを忘れられないでいるよ。

それは良いように作用することも、悪いように作用することもあったけれど、とにかく、独りで生きていけるということを知ったし、あなたがいない世界のつまらなさも知りました。

きっとあのときはわたしもあなたもお互いにこどもだったから、お話を聞いてくれるだけで嬉しかったし、お話をしてくれるだけで嬉しかったんだね。

「あなたがいればその他になにもいらない」きっとふたりともそんなふうに感じていたし、そのうち、「あなたがいないとなんにも価値がない」になっちゃってたんだね。だからそれにお互い耐えられなくなっちゃったんだと思います。でも、あなたがいなくても世界は世界だし、わたしはわたしでした。お互いの境界を、いまなら見つけられる気はするんだけどね。

最初のほうに書いた、”もしまた会えたらこれを言いたいな”というのは、ほんとうはもっと楽しいことだったはずだけれど、ちょっと重くなってしまいました。そういう話が苦手だったのも覚えてるけど、たまにはこういう話してみるのもいいと思います。

こんどはまた、いつものようにあなたの好きなもののお話を聞かせてください。


あなたがきっと今でもどこかで生きていて、今までにないほどの幸せを感じていてくれますように。

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手紙 はる @Hal_yasumi

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