2. とんでもない滅相もない申し訳ない覚書

自分のために、丁寧な言い方についての覚書をちょっとしておこうと思います。

「今更そんなことを」と感じられる方も多いかもしれませんが、普段こんなことを考えているよ、という感じで書きますので、よろしければ最後までご一読くださいませ。



褒められたときの受け答えで一番いいのは「滅相もないことでございます」。


「とんでもないことでございます」は、場合によっては良くない。

高齢者の中には違和感を覚えるという声もあった。

使い方としては、褒められたときではなく謙遜されたとき、例えば

「僕は無粋な人間でね」→「とんでもないことでございます」

が正なのだろうか。(違和感は全くないが要確認)


「滅相もございません」

「とんでもございません」

「滅相もない」「とんでもない」はまとまった一つの言葉のため、本来は「ございません」のみが付く形だとおかしい。

もうかなり一般的になっている言い方だし、個人的には別にいいよねぇと思うけど、小説内で使うには注意が必要。

「申し訳ない」も同様で、「申し訳ございません」ではなく「申し訳ないことでございます」が正。


注意が必要なパターンとしては、主に時代モノを書くとき。

ほんの一例だが、明治時代のデパートメントストア、三越呉服店の店員が客に「あなたの案内はとても良かった」と言われるシーン。

店員が「とんでもございません」と返すと違和感がある。

「あなたの案内はとても良かった」→「滅相もないことでございます」

これには違和感がない。

明治38年に誕生し、のちに「デパートメントストア」と呼ばれた百貨店である。きっと西洋文化も存分に取り入れ和洋折衷の品揃えをしていたのだろうと推測できるが、店員は皆しっかり教育されていたはずだ。そこで、主に富裕層であろう客に「とんでもございません」は言わないのではないか。

ただ、当時、女性が使う表現と男性が使う表現が今より厳密に分かれていた可能性がある。

女性/男性であればおかしい響きにはならないということもあったかもしれない。(要確認)


ちなみに「とんでもございません」で高齢者が違和感を覚えるというのは、以前働いていた職場で実際にあった。

同僚も同じことを言っていた。

敬語は尊敬語・謙譲語・丁寧語と分かれるが、そこまできっちり考えなくても、自分の違和感を大切にするのはいいことだと思う。



というように、知識がないなりにも色々考えながら書いております。

いや、知識がないから、なのかもしれませんね。

文句を言わせたくない、違和感を覚えさせたくない、スムーズに読んでもらいたい。

こうして文字にしてみるとそんな思いが見えてくる気がします。


文法や正しい言い方などの文章における「正」は、とても重要だと思っています。

「正」を知るからこそ「誤」を理解でき、あえて文章を崩すこともできる。

そういうやり方を少しずつでも身につけていきたいものです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る