第37話
あれから一週間、ラクザンカ達は今にも底を尽きそうになってる貯金を少しでも潤す為に日銭を稼いでいた。ある時は小魔獣の討伐クエスト。またある時は薬草採集といった具合だ。そして今現在……。ユリ達が依頼の品を集め終えギルドに帰還しようとした時、ユリがふと何かを思い出したかのようにラクザンカに聞いた。
「ねぇラック?あなた最近、寝不足じゃない?」
ユリの言葉通り、ここ数日の間ずっと深夜まで仕事をし続けていた為か、顔色が優れていない。ユリはラクザンガを心配していたのだ。するとラクザンカは笑って言った
「あ?あぁ~!大丈夫さ!アタシは元気だよ!」
と、明らかに無理をしている様子である。それを見たユリは“ダメだよ”と言うと同時にユリはラクザンカの手を掴む。そしてラクザンカの目を見て言った。
「ラック、無理は良くないよ。確かにウチは今文無し寸前だけど……でもね、それでも一緒に頑張ってくれる仲間がいるんだよ!そんな仲間の事を考えたらきっと……」
話してる内にユリの目に涙が溜まってきた。
“私は本当に弱いなぁ”と、ラクザンカは心の中で思いつつも必死に説得しようとする。
「ま、待て待て待て!悪かった悪かったって!……けどこうでもしねぇとアタシの気が済まねぇよ…だってあの学園祭で一番散財したのはアタシだぞ!」
そう、実はあの4人の中で金を消費したのはラクザンカであった。酒によっていたせいか飲食は勿論、親しくなった者への土産に記念品、挙げ句の果てには何時何処でどのタイミングで使えばいいか分からない物すら買ってしまったのである。ラクザンカはその事にとても後悔し、反省して人一倍に頑張っていたのだ。
「だからってラック……何もそこまでしなくても良いんだよ?」
ユリの言葉にラクザンカは驚いた表情を見せると、観念したのか落ち込んだように返事をした。
「わ、分かったよ……もう無茶はしないよ。早く切り上げてゆっくり寝るよ…。」
ラクザンカの反省する姿を見て安心したのかユリは優しく微笑んだ。そして2人はギルドへと戻り、納品を終えて自分達の宿に帰った。2人がいつもの裏路地を通り、宿の前に着いたがドアの前に見慣れない者が2~3人いた。薄暗い所に似つかわしくない程に銀色に輝く鎧を身に纏っていた。
「あ?何だアイツら?脱税調査か?」
「そんなわけないでしょ?でも、国の騎士団がどうして…」
ラクザンカは鎧の集団に気付き、ユリがそれに応対する。
「あのー?何か御用でしょうか?」
2人に気付いたのか中央に居た1人の男が答えた。
「……あぁ、すまない。ここに“ラナンキュラス”というパーティーが泊まっていると聞いて来たんだが……」
それを聞いた瞬間、ラクザンカとユリは顔を見合せると同時に言った。
『え?』
2人が困惑してると、その内の1人……いや、2人の兵士が前に出てきた。2人は交互に一枚の紙を見せた。その紙には事細かい文字がびっしりと書いてるが端に朱印が押されていた。それは国王からの依頼でもある意味でもあった。
「国王陛下直々の命令である。早急にラナンキュラスに出向いて貰いたい事がある。」
「是非とも、ラナンキュラスのリーダーにお会いしたい。今はどちらに?」
「え、いや…あの…」
兵士達に聞かれて少し萎縮してしまうユリの間にラクザンカが割って入った。
「おい待てよあんたら。あんまユリ怖がらせるんじゃねぇよ。」
「これは失礼。おいお前達、そんな怖い顔で迫るものではない。控えてろ」
中央に居たリーダーらしき騎士が注意すると2人は直ぐ様、謝って後ろに下がった。その後、兵士らは王国騎士団第9分隊でリーダーはジエナーと教え、ラクザンカ達はラナンキュラスのパーティー仲間だと伝えてアジトにしている部屋に案内した。ラクザンカはミザァ達に事情を話して騎士団を部屋に入れた。
「それで、王国騎士団の皆さんが我々に何かご用でしょうか?」
ミザァはジエナーに聞くとジエナーが答えた。
「いえ実は…皆さんがアドニス学園で捕縛した盗賊団の話を聞きましてね。それも被害を最小限に抑えてくれたんですよね?聴取した警備隊もとても称賛してましたよ。」
それを聞いたミザァを除き、ラクザンカ達はいやいや~と照れながら満更でもなく否定していた。
「お恥ずかしい話、例の盗賊団は我々ですら手付かずだったんです。そんな奴らを偶然に出会ったとは言え全て捕えるなんて国王すらも賛美してまして、もしかしたら“例の件”も貴女方ならきっとっと。」
「例の件……?」
「聞いたことあると思いますが南西の国で最近、行方不明者が多発していまして。」
南西の国……そこは500年前まで魔王含む魔族達が根城にしていた場所であった。しかし全世界の総戦力が結集し、激しい攻防戦を繰り広げていた。そして遂に魔王を討伐した後、生き残った魔族と人間含む多種族の代表達が和平条約を結び、例外を除き関わらない事にしていた。しかし、時間の流れもあってか条約の締まりが緩くなり、魔族の他にも様々な種族が南西に移民していたり、魔族が他の土地に出たりしていたのだ。
「その南西の国で行方不明者が出たって事はまさかまた魔族が…。」
「いえ、その逆です。南西の国の魔族が行方不明になってるんです。」
ミザァの問にジエナーはそう答えると、続けて言った。
「魔族の人達が被害に……それでそちらでは既に目星が?」
「はい。部下と共に極秘に情報収集していたんですが、どうやら数ヶ月前から国外の人間が出入りしていたんです。で、更に調べた所、【サルビアーチャ】と言うカンパニーの関係者らしいです。」
「サルビアーチャですって……!?」
サルビアーチャは各国にあるギルドの中でも大型パーティーであり、500人以上の冒険者が働いており、その内の1人、サルビアーチャのリーダー“アタラクシア”は王国騎士団団長と肩を並べる程の実力を持っている。
「しかし、あのカンパニーが何故……」
「それはまだ分かりません。ただ、南西の国で何か企んでるのは確かです。」
ジエナーの言葉にラクザンカ達は少し不安になった。自分達が今まで戦ってきた魔族や魔獣とは訳が違うからだ。
「そこで皆さんには我々が手配したギルドのファミリーと共に調査してもらいたいのです。勿論、報酬も出ます。」
ミザァは深く考えてる内に、横からシュンランが答えた。
「……しかしのぉ、相手はSランクになりたての大規模組織。しかもそのメンバー殆どがSからAランクの冒険者ばかりじゃと聞く。ワタシらとは月とすっぽん、天と地の差がありすぎる。とてもじゃないがいくら王様の命令と言えどものぉ……」
「謙遜しないで下さい。遠方の闘技場優勝者であるラクザンカ殿とユリ殿、600年分の魔法を習得した魔導師であるシュンラン殿、今は不在ですがあの名門校であるアドニス学園の生徒会長であるネモネア殿、そしてその彼女らをまとめ、指揮する上位ネクロマンサーであるミザァ殿。これ程までの実力者であればきっと依頼を達成出来る筈です。」
ジエナーがそう言うとラクザンカは一瞬、嫌な眼差しをして思った。
(コイツらいつの間にアタシらの個人情報を…訴えてやろうか…)
それに気付かないジエナーは何とかミザァ達を説得して了承を得て貰おうとしていた。しかしミザァは考えた後にようやく答えた。
「ジエナーさん、誠に申し訳ありませんですが我々は実績はともかく、ハッキリ言って寄せ集めの集団みたいな者です。そんな我々が王様の命とは言え、そんな危険な任務に動向するのはどうかと……何よりそんな危険な所に仲間を簡単に同行するわけには……。」
それを聞いたジエナーは、ミザァの言う事も一理あると思い、少し考え始めた。
「……分かりました。しかし、我々もこのまま引き下がる訳にはいきません。そこで提案です。もし皆さんがこの任務を受けてくれたら……そうですね、報酬を金貨3000…いえ、金貨5000枚と言うのはどうでしょうか?」
「「「えッ!?」」」
ジエナーの言葉に3人は驚いたと同時に目を輝かせた。そしてミザァは直ぐに言った。
「……わ、分かりました!是非ともお引き受けさせて頂きます!」
ミザァの答えにラクザンカとシュンランは慌てて言った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ!そんな簡単に条件変えてくる仕事受けてもいいのかよ!?」
「おい、どうするんじゃ?もしかしたらSランクの奴らと大喧嘩することになるぞ?」
そう言うがミザァは決心したような顔で言いきった。
「…皆さん、冷静に考えてみて下さいよ。仮にもし、サルビアーチャが魔族行方不明事件に関与したらどうするんですか?何の罪もない魔族を手に掛けるなんて冒険者の風上にも置けませんッ!今こそ我々、善良なパーティーがその悪行を阻止し、囚われた魔族を救いだそうじゃありませんかッ!!」
その気迫に2人は流石にたじろぐが、シュンランは冷静にミザァに言った。
「……じゃがのぉ……その任務でもし本当にサルビアーチャの面子と戦闘になったらどうすんじゃ?」
「その時はその時です!私はギルドで活動するイチ冒険者として、どんな事だってしますッ!」
それを聞いたジエナーは安心しながらミザァ達に向かって言った。
「では、皆さん。時期が来たときにサルビアーチャの本拠地である“ナバリドヨヒ島”の拠点に向かいますので入念な準備をしておいて下さい。こちらがその関係書類です。」
すると後ろで待機していた部下2人が持っていた鞄から色々と書類をテーブルに置いた。その書類は目的地が書いていた地図やサルビアーチャのメンバー名簿履歴、更にラクザンカ達が協力するファミリーの名簿履歴があった。そしてジエナーは鞄を持って“それでは皆さん、また後日”と告げて部下と共に部屋を後にした。ミザァ達はそれを見送った後、テーブルの資料をパラパラと眺めていた。その席上に立つラクザンカは興味深そうに資料を見詰めていた。
「ほぉ…ドラゴンスレイヤーに元護衛団副団長、全世界格闘技優勝候補に元上級辻切りまでいるじゃねぇか……流石はカンパニーを名乗ってるだけはあるな。」
それを聞いたユリはふと、ラクザンカが何時の間にか写真を見ていた事に気付いた。
“え?見せて見せて!”と、ラクザンカに寄りかかり一緒に書類を眺めていた。その間にシュンランがミザァに聞いてみた。
「しかしミザァよ…お主にしては珍しいのぉ?報酬の金額が上がった途端、直ぐに了承するなんてなぁ。まるでネモネアみたいだったぞ?」
「今の我々には金が必要なんです。何せ今は金欠ですし、昨日大家さんが家賃を何としてでも払わないと今すぐにもここを追い出すなんて言われましたよ。」
それを聞いた瞬間、シュンランは呆れながら言った。
「なんじゃ…やっぱりそんな事じゃったか。まぁでも確かに今のワタシらの稼ぎじゃ家賃払いには間に合わないしのぉ……。」
シュンランは地図を見ながら愚痴を溢していた。それをユリがなだめがら言った。
「まぁまぁ、今はそんな事よりこれからの任務に集中しましょう?にしてもサルビアーチャの拠点のナバリドヨヒ島ってどんな所なの?」
ユリの質問にミザァは答えた
「その島は元々、南西にある諸島地帯で、自然豊かで多種多様な魚や海鳥が生息していたんです。そこをアタラクシアさんが買い取って、拠点にしてるんです。」
「島を買うって…一体どれだけ稼いだんだコイツら?」
ラクザンカがそう言うとミザァは直ぐ様答えた。
「確か…サルビアーチャが結成したのが10年前…その頃からコツコツと稼いでいたのかもしれないですね。それに島にはアドニス学園のOBが多数いますし、上位冒険者達もこの島に住んでいると言う噂もあるくらいですね……。」
それを聞いたラクザンカ達は納得したような顔をしていた。するとミザァは地図を見ながらある場所を指で指した。
「とにかく皆さん、次の依頼は今まで以上に危険で大変な事になりそうです。いつも以上に準備して予定日には万全の状態でこのナバリドヨヒ島に行きましょう。」
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