第36話

ネモネア達は盗賊頭領であるフェンリルを捕縛した後、学園内ではラクザンカ達は残りの盗賊団を一人残らず捕らえた。その事は学園全体には伝えず、僅かな警備隊と教員に伝えて、盗賊団を全て騎士団に明け渡した。

盗賊達は全て奴隷として騎士団に引き渡された。その際に盗賊団の面々の犯罪歴等が記載されており、その内容にラクザンカ驚愕した。特に盗賊団の半数近くは元暗殺者であった事実に驚いた。この盗賊団の存在は実は裏社会では少し有名な存在だった。彼等が行っていた犯罪方法は人攫い及び殺人等の凶悪な内容のものであった為である。王国の治安の悪化を防ぐ為に密かに騎士団やギルドに非常に重要な案件として扱っていた。もし盗賊達に魔法石を盗まれ、国外逃げられるような事態になっていたら今まで以上に大変な被害が出ていた可能性もあるからであり、それを阻止する事が出来たという点でもラクザンカ達に多大なる恩賞を授けられる事になった。だがラクザンカ達はこの事をまた後日、改めて受けたいと申し出た。理由を聞くと、今は戦闘による負傷と疲労を回復させたいと言ってきたので、騎士団長は仕方なくそれを了承し、数日だけ体を休め、回復してから国王に面会するように言われた。その事にラクザンカ達は喜びつつ返事をした。その後、ラクザンカ達はさっき座って飲み食いしていたテントに戻り、飲み直していた。

「ふぅ、やっと落ち着いて酒が飲めるな……全くとんだ学園祭だぜ……。」

「そうじゃのぅ。だけど今回の一件でネモネア達の株が上がったと思うわぞ?」

「確かに今回の活躍でネモネアさん達の評価は大幅に上がったと思います!」

「…ですが、今はその事は少し後で話しましょう?ネモネアさんは余り聞きたくないらしいですし…」

そう言われてネモネアが座ってる席を見るとネモネアが何故か頭を抱えてブツブツ呟いていた。何か言ってるようだけど声が小さくてよく聞こえない。するとシュンランが口を開いた。

「いやそれがのぉ…奴とスモネアの話をチョイと盗み聞きしていたんだが、今回の件の事があって色々と後片付けしなきゃならなくてな……それに奴も当事者じゃ、全貌を知りたい奴も多い。それで奴は暫く、この学園に残るそうじゃ。」

「なるほど…つまり学園の件が一段落するまではここに留まるという訳か。納得した。」

ネモネアはアネモネの全部投げたして楽になりたい、何者にも囚われず自由になりたいと言う…どちらかと言うと悪い方の心が別れた方だった。ネモネアにとってはこれ以上にない苦痛だった。ラクザンカ達が話してるとネモネアが立ち上がってこちらに向かって来た。そしてラクザンカの方に近づいてきて顔を近づけてきた。ラクザンカは驚いて身を反らした。何故ならネモネアの顔は真っ赤になって今にも泣き出しそうになって言った。

「なぁ~おいッ!助けてくれよ~ッ!このままじゃあたい窮屈でマジに死んじまう!!頼むから!!!」

そう言うと泣き出してラクザンカの服にしがみつきながらその場に座り込んでしまった。その姿を見た一同はどうすればいいのか分からずオロオロするしかなかった。

その光景を見てミザァは溜め息混じりに眼鏡をクイッと上に上げてネモネアに対して一喝した。

「ネモネアさんッ!いい加減にしてください!!見苦しいですよ!!」

ミザァが一喝した事でその場にいる全員が目を見開いた。ラクザンカはネモネアを安心させるようにポンポンと背中を叩いた。

「……まぁ、落ち着けよ……このままじゃやりずらいだろ?」

ラクザンカの言う事も尤もだと思い、ミザァは額を抑えながら静かに言った。

「……それもそうだな……」

そう言われてネモネアは徐に立ち上がり涙を拭いた。そして思いっ切り息を吐いた後、ミザァに尋ねた。

「それでさ~、話は変わるんだけども……ミザァちゃんさー」

そう言ってネモネアはジロリとミザァの方を見た。名前を呼ばれたミザァは首を傾げた。“なんでしょうか?”と返事をするとネモネアはニヤリと笑った後口を開いた。

「ちょっとだけ…ほんのちょっとだけさ…お小遣い頂戴♪ほら~?久々の学園生活だしさぁ~?色々と必要じゃ~ん?だからさ~?ねぇお願い~?」

そう言ってネモネアはミザァの手を取り、猫なで声で言った。するとミザァの顔がみるみると赤くなっていき、怒りのせいかプルプルと震えだした。そしてミザァはネモネアの手を強く振りほどいて怒鳴った。

「ふざけるのもいい加減にしなさい!!さっきから何なんですか!?全く!これだから馬鹿は嫌なんです!!」

とミザァが言うとその言葉に同意するようにラクザンカ達は深く頷いた。それを見たネモネアはポカーンとして首を傾げて“なんだよ、ひでーな……”と言ってネモネアは思いっきりしょげてしょんぼりとした様子で隣にいたシュンランに慰めて貰おうとする為に抱きつこうとしたが、シュンランはそれを軽くかわしてラクザンカ達の方を見て言った。

「それでネモネアはこれからどうするんじゃ?学園に残るのはいいとして、ワタシ達のパーティーはどうなる?一時的とは言え抜けるんじゃ。ギルドに一応、報告しとくか」

そう聞くとネモネアは頭を掻きながら答えた。

「あ~それな、スモネアが既に報告しているからその心配はないよ。まぁ最も、アイツは今回の事が無くてもあたいを強制的に置かせるだろうがな」

そう気だるそうに言うとユリが感心したそうに言った。

「い、妹さん…準備が早くて凄いですね…。」

「そうか?まぁアイツはああ見えて優秀だからな~。それに今までのツケの払い時って奴さ……」

そう答えるとラクザンカ達は微妙な表情をした。それに気付いたネモネアが首を傾げながら聞くとユリが慌てた様子で誤魔化した。“何でも無いですよ!本当に!”と言ってそれ以上聞く事は無かった。それから暫くの間、色々と会話しながら飲食をしていると向こうからスモネアが数人の生徒会員を連れて現れた。

「ネモネア、迎えに来ましたよ。そろそろ生徒会に戻りましょう。」

スモネアがそう言うとネモネアはコップに入ったジュースを傾けながら嫌そうな顔をして言った。

「えぇ~、もうちょい飲んでからじゃ駄目?離れ離れになる仲間との最後の宴会かもしれないんだよぉ?」

その言葉に呆れた様子でスモネアはネモネアに近付いて言った。

「全く……貴女と言う人は……今まで散々好き勝手やって来ただろうがクソがぁ…。もう十分に遊んだだろうがボケがぁ…。遊びとは本来仕事をこなしてからするもんでしょうがアホぉがぁ…」

そう言ってスモネアはネモネアの後ろ襟を掴みそのままテントを出た。そしてテントの外でラクザンカ達の方を見て言った。

「皆さん、本日は本当にお疲れ様でした。改めまして学園を守り下さってありがとうございます。どうかこの学園祭で疲労を十分に癒して英気を養って下さい。ではこれで失礼します。」

そう言ってスモネアはネモネアを引っ張っていき、テントから離れて行った。それと同時に生徒会役員がやって来てラクザンカ達の前に来て深々と礼をして再び、スモネア達の方に行った。それを見送った後、シュンランが持っていた酒を飲み干して言った。

「それで今後じゃが……どうする?ワタシは折角だからこの祭を楽しもうと思うが?」

そう言われてラクザンカ達3人は考え込んで言った。

「向こうが楽しめって言ったんだ。そう言うのなら従うしかねぇよな?」

「うんうん!こんなお祭り、私初めてだからさ!もっと楽しもうよ!」

「はぁ…まぁいいでしょ。向こうの善意を無下にするわけにはいきませんし…。」

「そうじゃな。なら、この祭をもっと楽しむとするかの!」

4人がそう言うとラクザンカはニヤリと笑い言った。

「おう!なら、今日は飲むぞぉッ!!」

「「「お~うッ!!」」」

そう言って4人は再び飲み始めた。そして夜遅くまで学園祭を十分に満喫し、最後の夜に大規模な花火が打ち上げられ、学園祭の幕が下りたのだった……。

それから翌日の朝一番。日の出が学園を照らし出し、一番鶏が鳴き始めた頃、ラクザンカ達は特別に泊まらせてくれた学舎を出て、街に戻ろうとしていた。

「そんじゃ、学園の事が済んだらまた会おうな。」

そう言ってラクザンカはスモネアとネモネアの2人に向かって言った。その言葉にネモネアは頷いて答えた。

「あぁ、早めに終わらせてまた楽しい事しようぜ。」

「ネモネアが抜けた分の仕事、まだ山積みなので多分1ヶ月は掛かりますがね。」

ネモネアの言葉にスモネアはジト目で言った。するとネモネアはスモネアに近付いていき耳元で囁いた。

“ちゃんと仕事するからよ?一緒に手伝ってくれよ?” そう囁くとネモネアはニヤリと笑ってスモネアから離れた後、ラクザンカ達に手を振って別れた。

「それじゃ、あたい達は行くわ!」

「それでは皆さんお気を付けて……」

2人はそう言って学園の方に行った。そして2人の姿が見えなくなった後ラクザンカはユリ達の方を見て口を開いた。

「さて……あたし達も行くか!」

そしてラクザンカ達は学舎を出て、学園の門を潜り抜けた。そこには迎えに来た馬車が待っていた。ラクザンカ達は馬車に乗り込み、御者の男性に行き先を言って出発した。

馬車が走り出してすぐにユリはラクザンカ達に言った。

「そう言えば、今回の事ってギルドから受注してないんですけど依頼を行った事になるんですか?」

そう言われてラクザンカ達は悩み始めた。そしてシュンランが口を開いた。

「そうじゃのぉ……。依頼料を払うかどうかはまだ分からんが……街に着いたらギルドに報告した方がいいのぉ?」

「そうですね。依頼とは別でやりましたし、今回の一件は全て生徒会と警備隊で済ませたっていう世間の認識になると思いますから……まぁ実際に聞いてみないと分からないですね。」

シュンランの問にミザァは頷いて答えた。そして馬車に揺られる中、学園祭での出来事や美味しかった料理、楽しかったイベント等、様々な思い出を語り合いながら街に向かって行った……

ラクザンカ達は街に着くとすぐに冒険者ギルドに向かった。そしてギルドに入ると相変わらず多くの冒険者達で賑わっていた。ラクザンカ達はその人ごみをかき分けて受付まで向かった。そして受付嬢に話しかけた。

「すみません、ちょっといいですか?」

「はい、何でしょうか?」

「私達、ある盗賊団の捕縛に成功したのですが、実はその盗賊団捕縛の依頼を受けずにしたんですがこれは依頼を成功したことになるんでしょうか?」

ミザァの質問に受付嬢は最初は驚いたが、すぐに冷静になり、少し頭を抱えた。そしてラクザンカ達に言った。

「う~ん、そうですね……皆さんは確かアドニス学園で発生したフェンリル盗賊団の捕縛をしていたんですよね?」

そう言って受付嬢は書類を取り出して何かを確認しながら話しを続けた。

「はぁ、そうですが……」

「そうなると貴方達にその盗賊団の捕縛の依頼を直接発注した訳ではありませんし、現状では成功とは言えません。ですが今回の一件はギルドに一応報告されていますので報酬はまた別の形で支払われると思います。ですので今回は不問としますが、報酬の方は暫くお待ち下さい。次回からはちゃんと依頼として受けてくれるようにお願いします。」

そう言うと受付嬢は頭を下げた。ラクザンカ達は渋々、了承してギルドを出た。

「ふむ…つまり今回の依頼は無効って事か…そうなると報酬は……」

「はい、実質0ですね。」

シュンランの言葉にミザァは淡々と答えた。するとユリが困り顔で言った。

「そうですか……で、でも!今はそこまでお金に困ってないじゃないですか?そんなに気にしなくても……!」

ユリは明るくそう言ってラクザンカ達の方をくるりと振り返ったがミザァは再び淡々と答えた。

「いえ、それがですね…アドニス学園祭で皆さん、色々と買い食いとかお土産買ってましたよね。その時に結構、出費が掛かって我々の全財産は現在、飲食店に一回使うだけで財布が空になる位です。」

その事を聞いたラクザンカ達は“は?”と言う顔をしてミザァの方を見て言った。

「え?マジで……?」

ラクザンカの問にミザァは静かに頷いた。そして続けてシュンランが口を開いた。

「う~む……それはマズイのぉ……この調子じゃと今月の家賃払いきれんぞ?最悪、宿を追い出されるぞ。」

「えぇッ!?そ、そんな!私野宿は嫌ですよ!と、とりあえず直ぐにギルドに戻って即日依頼がある所に行きましょッ!!」

「あ、あぁ……」

ユリの勢いに押されながらラクザンカ達はギルドに入り、手当たり次第に依頼を受け、こなしていった。

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