第21話決闘申し込み


「チェックメイト」


僕は執務室でイリアの言われるがまま仕事に取り組んでいたが、ジークがチェス盤を持ってやってきたので相手になってあげていた。


「ダァー!!また負けたぁ!」

「ふっふっふ、ジークが僕に勝つなんて10年早いよ」


これで僕の3勝0敗。全勝で気分が良い!女性陣はチェスがめちゃくちゃ強く、僕とジークは相手にならないので2人でレベルの低い戦いを繰り広げている。


「もっかい!今度こそ勝つ!」

「よーし、今日は調子がいいから受けて立とう」


再戦のため、ジークと駒を並べようとしていたら、


「何回やるつもりですか。もう十分遊んだでしょう?仕事に戻ってください!」


と、イリアが僕に呆れながら言ってくる。


「もう一戦したらやるから待ってて!」

「駄目です。今から始めないと今日中に終わりませんよ?」


即却下される。え、待って。というかそんなに有るの?ますます仕事をする気が無くなっていったよ。僕は現実逃避にチェス盤へ駒を並べ始める。


「さ、やるかジーク!」

「だから駄目って言ってるでしょう!!」


駄目かー。イリアにチェス盤を取り上げられる。すると、僕とイリアのやりとりを見ていたジークが頭を掻きながら口を挟む。


「まあまあ、いいじゃんか。今日は俺も手伝ってやるし、もう一局くらいやらせてくれよ」

「ジーク……」

「ジーク様」


いいぞジーク。ディラン帝国の皇族相手じゃ、帝国貴族子女のイリアも強くは出れまい。


「………分かりました。ジーク様がそうまで言われるのでしたらもう一戦だけ許します。でも、対戦相手が同じ人では飽きも来たでしょうし、私が2人まとめて相手になってあげますよ」


イリアもやりたかったのかな?………冗談は置いといて、彼女と僕らじゃ棋力の差が大きくて全く相手にならないのだ。だから正直ご遠慮願いたいのだが彼女はやる気満々だ。

これは、チェスなど二度とやる気が起きないように僕らをコテンパンに負かそうとする気である。

やばい。

イリアはもう一つチェス盤を用意してから椅子に座り、駒を並べている。


「アルス、やるしかないぞ」

「ジーク……」


ジークがイリアに聞こえないようにひっそりと僕に話掛けてくる。


「なに、俺たちも実力はついたはず。昔みたいにコテンパンにやられはしねぇさ!」


そうかな?そうかも…。イリアと前にチェスをしたのは学院入学前になる。イリアは懐かしそうに駒を触っていることからチェスをするのは久し振りなのだろう。

いけるか……!

僕は入学してからもよくロベルト先輩やシリウス先輩と指して実力を磨いてきた。それに僕とジークとの多面指しだし、いい勝負になるのでは…?


「はい、準備は整いました。早速始めましょうか」


イリアが駒を並び終え、僕達に声を掛けてきた。僕は覚悟を決め勝負に挑む。


「いこう」

「おう!」


数分後。…………………………完敗でした。


僕は椅子に座りながら脱力して天を仰ぎ、ジークは机に顔を伏せていた。


「ま、まさかここまで実力差があったとは……」

「いやほんと、驚きだよ。僕の成長のなさに……」


ここ数年、実力を磨いてきたつもりだが、そんなもの無価値であるが如く何もさせてもらえずに負けた。よって僕らの自信は粉々にさせられた。


こんな惨状を作り出したイリアはというと、上機嫌な様子で僕らに話しかけてくる。


「久し振りでしたけどやっぱり楽しいですね。もう一局しませんか?」

「い、いや仕事あるしもうやめとこうか」

「えぇ、いいじゃないですか。仕事は明日やりましょう」


イリアさん、あんなに仕事仕事言ってたくせにどうでも良くなってない?


「大丈夫です。シャルロッテ様にも手伝って貰えば直ぐ終わります。決闘で勝って得た命令権まだ使ってないですし」

「それは自分のために使いなよ…」


これは、マズイな。僕もジークも心が折れかかっているのに追い打ちでまたボコボコにされるなんて堪ったものじゃないぞ。ここはロベルト先輩を召喚するしかないか–––––!

僕が召喚魔法でロベルト先輩を召喚しようとした瞬間、ドアをノックする音が聞こえた。


「誰でしょうか?」


イリアがそう呟き、すぐさまドアの方へと向かう。

僕の執務室によく訪れる人はイリアを除いてノックなんかせずに入ってくるから、誰なのか見当も付かない。

お客さんが来たのだからチェス盤は片付けないとね。

僕は収納魔法でチェス盤を片し、ついでにジークが他にも持ってきたガラクタも片っ端から異空間へ仕舞っていった。


「どうぞ、お入りください」


イリアが扉を開けて部屋に入るように促した相手は、1年生のシスナ・ティームさんだった。

水色の髪に濃い蒼の瞳が特徴的な美人さんだ。


「お、シスナじゃん。何しにきたんだ?」


彼女と知り合いらしいジークが気軽に話しかけてどんな要件なのか尋ねてくれた。

シスナさんはジークではなく僕の方を向いて話し出す。


「突然の来訪申し訳ありません。アルス先輩にまだ一度も顔を合わせる機会がなかったので挨拶に参りました」


決闘の映像を何度か観ていたので初対面のような感じはしないけど、確かに僕とシスナさんは顔を合わせたのは今日が初めてだ。

というのも僕が会議をサボっているせいだね。なんだか申し訳ない気がしてきたので、こちらから名乗ってしまおう。


「そっか、わざわざありがとう。僕はアルス・リーダスト、よろしく」

「新たに序列7位となりましたシスナ・ティームと申します。よろしくお願い致します」


彼女は挨拶を口にしてからお辞儀をしてきた。

1つ1つの動作がとても丁寧で、流石はリーア聖国の巫女と思わせられる。


「うん。ささっ、シスナさんも座って。君とは話してみたいと思ってたんだよ」


彼女の得意な魔法について聞いてみたかったのだ。巫女として扱えるであろう回復魔法と、答えてくれるかは分からないけど彼女独自の魔法の2つに僕は興味がある。


「いえ、私はこのままで。挨拶と、もう1つの用件が終わりましたらすぐ退室させてもらいますので」


断られてしまった。まあ、用事もあるだろうし仕方ない。すると、ジークが待ったをかける。


「なあ、ちょっとくらいいいじゃんか。お前いつも1人でボーってしてるだけなんだから暇だろ」

「ジーク、無理強いはよくないよ」


それと、僕を思ってのことなんだろうけど、もう少し言い方を気をつけてあげてほしい。

なんとなくジークを見る目がちょっと怖くなってたよ。僕はシスナさんの方へ顔の向きを戻し話の続きを聞く。


「残念だけど仕方ない。それで、もう一つの用件というのは何かな?」


シスナさんは姿勢を正し僕の目を真っ直ぐ見つめ言った。


「はい。序列1位アルス・リーダスト先輩に決闘を申し込みに来ました」

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