第20話
ロベルト先輩と約束した通り、犯罪集団の被害に遭いそうに人を助けるようになってから数日、僕はもううんざりしていた。
多い!
1日に1回は助けに行ってるよ!
昨日なんてお風呂に入ってる最中に結界に反応があって、急いで駆けつけたのだ。
これもう犯罪集団潰してしまおうか。いやでも……。
「アルスさん!考え込んでないでちゃんと応援してあげてください」
イリアが僕の肩を揺らし思考の渦にいた僕を現実に戻してくれた。
「ああ、ごめんごめん」
今、シリウス先輩とジークの決闘が行われている。
水と氷を操るシリウス先輩に、雷を操るジークの2人が戦ってるだけあってド派手だ。実力ははっきり言ってシリウス先輩が圧倒的に上だが、そんなの関係ないとばかりにジークは強気に攻める。
しかし、それを先輩は冷静かつ的確に対処しており、攻撃が当たる気配が微塵もない。この攻防でジークはもう一杯いっぱいのようだが、先輩はまだ余裕そうに見える。
「ジーク様、厳しそうですね」
「そうだねぇ」
これはもう勝敗はついただろう。
ジークがシリウス先輩に勝つのは難しそうだ。学院で2番目に強いシリウス先輩を相手にするのはまだ早かったのだろう。
そして案の定、ジークの降参の声で決闘は幕を下ろした。
「参った!!センパイつえーな、全然相手にならなかった!」
負けたというのにジークは悔しそうな顔をせず、むしろ嬉しそうに顔を綻ばせていた。
その様子にシリウス先輩も予想外だったようで目を丸くして驚いたがすぐに微笑みジークに返答する。
「いや、結構ひやりとした場面もあったから思うほど俺達の実力差はないと思うよ。もっと実戦経験を積んでからまた再戦したいくらいだ」
ほんとこの先輩、戦闘狂である。ひやりとした相手とわざわざ再戦したがるとかどうかしてるよ。僕なら絶対ヤダ。
「そうか?じゃあ、センパイが卒業するまでに必ず挑戦するから覚悟してろよ!」
「ああ、楽しみにしている」
なんだか爽やかな終わりとなって、前の試合とは大違いだ。ちらりと前の試合で対戦した2人を見たら、こちらも何か話をしていた。
「シャルロッテ様、私達もまた再戦いたしましょうか?」
「ええ、勿論。今度は必ず私が勝ちます」
なんだろう?
ジーク達はカラッとした感じで約束していたのに、彼女達の約束はジメッと湿度が高い気がする。
ジークとシリウス先輩の決闘の前に、イリアとシャルロッテの決闘が行われていた。
結果はイリアの勝利で終わっている。
今年の1年生は序列10位以内にもう2人も入ったことから黄金世代だと持て囃されていたが、1年生の中で2番目と3番目に序列が高い生徒が決闘で敗れ、上級生の面子も保たれたことだろう。
「あーあ。俺とシャルロッテどっちも負けちゃったし、そう簡単に序列5位以内に
は入れないか」
「はははっ、俺たちも先輩としても意地があるからね。簡単には負けられないよ」
入学したての新入生に負けることは自分が許せなくなるほどの悔しさがあると先輩は言っていた。
1年前、僕に負けたのが余程堪えたらしい。
最近になってこの話をされて驚いた。
ずっと僕にそんな素振りしてこなかったし、先輩は戦闘狂だからてっきり何も感じてないと思っていたので意外だったのだ。
「先輩の言う通りだよ。これでもこの学院でずっと戦ってきたんだ。それを実践経験の少ない新入生に負けてちゃ恥だよ、恥」
「アルスさん黙ってください!」
怒られちゃった…。
そうだ!ジークの次の決闘相手はロベルト先輩にしてもらおう。
あの先輩とジークならいい勝負すると思うんだ。
僕の見立てでは実力差も同じくらいだし、もしかしたらジークが勝ってくれるかもしれない。
ジークに負けたら先輩に今どんな気持ちか教えてもらいに行くんだ。
「ほんと、アルスはそういうとこ直せよ?」
呆れた顔してジークが僕に言ってくる。そういうとこって何?よく分からなかったが元気よく返事だけはしておいた。
「……まあいいや。あと現段階の1年生で序列5位以内に入れる可能性は一番上のシスナだけだな」
「シスナさんはあまり序列に対して興味がないようで挑戦するとは思えませんわ」
1年生で序列が一番上である序列7位のシスナ・ティーム。彼女と多少面識のあるシャルロッテが言うには序列にも戦闘にも興味を持っている感じはしなかったようだ。
良かった良かった。
じゃあ僕に決闘の申し込みとかは無いと言うことだね。
彼女と戦うのは面倒そうだなって思ってたんだよ。シリウス先輩は残念そうだけど、僕と顔に出してないつもりだろうけどイリアはホッと一安心していた。
僕はたまに深夜に散歩がしたくなる。
この時間は人と出くわすことが少なく静かでゆったりとすることが出来るから好きだ。
ボーと何も考えず冷たい空気を感じなから歩いていく。
これでも僕はいろいろ仕事があってリラックスできる時間が少ない。
だからこういうことができる時間はとても貴重なのだ。だと言うのに…………。
「死ねぇアルス・リーダスト!」
現在僕は夜の散歩途中に襲撃に遭っていた。
突然背後から不意打ちに遭うが、どうにか回避して攻撃をしてきた相手を鎮める。
相手が倒れたのを確認してから周りを見ると襲撃者は彼だけではなかったらしい。
襲撃者は倒れた人を含めて10人ほどか。
僕を取り囲み逃げられないようにしている。
僕が襲われている一般生徒を助け犯罪集団を倒しまくったせいで邪魔だと判断したのか排除に向かってきたのだろう。
だけど君たち、僕一応序列1位だよ?10人程度でやられるわけないでしょ、と思うのは僕の高慢だろうか?
何にしてもそちらからやって来てくれたのは助かる。
これで10人の犯罪者がいなくなるので、生徒が襲われる回数が少なくなり僕が急いで助けにいかずに済むのだから。
襲撃者に攻撃する隙を与えず、僕は素早く魔力弾を撃ち込み。1人を残し、狙った全員の額に直撃して気絶していった。
「なっ!?なにが…?」
僕は自分以外の仲間全員が倒れたことに混乱している相手に近づき、片手で首を絞める。
「君がリーダーでしょ?ちょっと聞きたいんだけどいいかな?」
グエッと快い返事を返してくれたので遠慮なく質問する。
「もし今救援とか出来るならして貰いたいんだよね。こんな馬鹿な事してる人いなくなって欲しいし。あと、こういう生徒を襲うようにしている首謀者って誰?君たちのボスならこんな事しないはずなんだけど」
首を絞められ苦しんでいたのに僕の言葉を聞いて、目を見開き驚いた表情に変わった。一旦手を離してあげて質問に答えるように促す。
「…………お前、どこまで知ってる?」
おかしいな。僕の質問に答えてもらう為に手を離してあげたのに答えてくれないよ。僕はため息をつき、仕方なくまた首を絞める。1度目よりも強く。
「ねえ、今僕が聞いてたよね?もう一度チャンスあげるから早く答えろ」
乱暴に手を離すと、相手は尻餅をつく。汗をだらだらかいて落ち着きがない。
「……救援は、俺には、出来ない。………首謀者の名前も言えない。魔法で口封じされているから」
あー、そっか。犯罪集団は口封じの魔法されているのすっかり忘れていたよ。じゃあもう彼に用はない。
「分かった、ありがとう。じゃあね」
「た、頼む!見逃しッ」
何か言ってたみたいだけど気絶させ、ロベルト先輩に連絡する。倒れている彼らの身柄は先輩に一任する。
連絡がつくと一方的に場所だけ言って通信を切る。
さて、散歩を再開しようかな。
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